スペシャリスト化については「時代が変わり、テクノロジーが変わって、その専門性が陳腐化したら何もなくなってしまう」と、小杉氏は警鐘を鳴らす。そのうえで「2本3本と自分の強みを複数つくっていかないと、生き残れない時代になっている。いかに自分独自の組み合わせで強みをつくっていくかを考えるべき」とアドバイス。さらに、企業に対しては「例えば、資本関係のない企業や海外企業などに出向させる。そうした選択肢をいくつか提示し、いわゆる修羅場体験をしないとマネージャーにはなれないといった方法もある」と提案した。

 アウトソーシングでは学習環境、心理環境、行動環境を整備し、従業員の自主的なスキルアップやキャリアプランづくりを支援しているが、次のような人財育成の取り組みも最近始めたという。

「挑戦しやすい環境をつくり、経験を積んでもらいます。具体的には、次の時代を担ってもらいたい人たちをグループの関連会社の主要な部署に配置。現地で失敗してもすぐに戻れるように見守りますが、ミッションの重要度は高く、プレッシャーも大きい。例えば、子会社の本部長と同じ待遇で出向させるので、社長に直接プレゼンしたり課長をコントロールしたりしなくてはならない。このような挑戦できる場を与えることがリーダーの育成には重要だと考えています」

 これからの時代、単純な業務の多くは外部委託が主流になることは間違いない。そのため、生産性が高い仕事ができる人を育てていくことは、企業にとっても個人にとっても非常に有意義なのだ。

 最後に、これからの日本企業のタレントマネジメントについて、それぞれが意見を述べた。

小杉氏「上から物を言って押さえつけるのではなく、自分の発想で自由に動いたり発言できたりするような雰囲気づくりのできるリーダーが上に立つと、関係性が良くなる。そうなると、思考が前向きになって積極的な行動を取るようになり、結果につながる。一人のカリスマ的なリーダーシップよりも、今は一人ひとりの持っている力を引き出すようなリーダーシップが求められる時代。ですから、いかに人間味を出せるかというのが今の日本企業の課題だと思います」

眞鍋氏「コンテンツはすべて用意するから、能動的に自分の学びたいことを学んでほしいというスタンス。自律という話もありましたが、それぞれが考えたキャリアプランを支援していきたいと考えています」

渡邊氏「人が成果を出すためのキーワードはモチベーションだと思っています。火事場の馬鹿力ではありませんが、やっぱり自分がやらねばという気持ちが奥底から出てくることが大切。そのための環境を整え、寄り添っていくことが必要です。課題を解決すると達成感が得られ、その達成感が成功体験となって自信がつく。たとえ失敗してもそれが反省となって次へのモチベーションになる。こうした環境をつくることが生産性を上げるためにとても大事になるでしょう」

企業・個人双方の成長につながるタレントマネジメントとは日本企業のタレントマネジメントについて、登壇者が活発に意見を交わした

(取材・文/河合起季 撮影/宇佐見利明)