ポイント3
状態目標と肝3つを明確に
これが実現するとこうなるという「状態目標」を設定する。先のエンジニア・コンシェルジュ制度の例では、「エンジニアがコードを書くことに専念できる」が状態目標だ。
状態目標を決めたら、そこへ到達するための「肝」となる事柄を3つに集約して、キックオフの時点で共有することが重要だ。「肝3つを決めるのは、プロジェクトに関わる人が増えたり、時間が経過したりする
と、各自の思いがぶれてくるからです。肝3つが明確なら、ぶれても途中で修正して元へ戻れます」と野島氏。重要な事は肝3つにこだわること。「2つでも、5つでもまとまりがつかなくなります」。
ポイント4
成功確度を上げるのは「最速」
会議でプロジェクト実施が決まると、すぐにポイント3を「最速」で実行する。
参加者の意識が一致したホットな状態が最も効果的だからだ。「最速」とはどのくらいのスピード感か。「当社では金曜・土曜の経営合宿が決まったら、事前に翌週の月曜にミーティングを設定しておきます。土曜の夕方には会議の議事録を配布し、月曜日には動き出します」と野島氏。
数日後に議事録を配布して、ミーティングは2週間後に設定というゆっくりとした出だしでは、最初からぶれてうまくいかない。
ポイント5
個別事例→風土→制度→文化
生産性向上に寄与する企業文化を作るためには、個別事例→風土→制度→文化というように、いきなり制度を作るのではなく、実績から積み上げていくといい。
サイバーエージェントの場合、個別事例として「GEPPO」という人事システムがある。
「やりたいことは何か」「特技は何か」というように切り口を変えたアンケートを実施したり組織に対する要望を聞き取ったりして、適材適所や課題解決に役立てている。
要望に対しては必ず返答をするため、要望を出せば答えが得られるという「風土」ができる。風土ができると外部には「当社はGEPPO という『制度』に基づいて経営判断をしています」と説明できるようになる。それが回り回って、社員の声が経営に届く会社という「企業文化」ができるというわけだ。
「企業文化を定めて、それを個別事例に落とし込むのは難しい。実績から積み上げる方が確実です」と野島氏。このように経営者が覚悟を持って5つのポイントを実行すれば、企業の生産性は確実に上がるだろう。
(ライター・山本信幸)