CBOは、米国議会の付属機関である。米国で予算に関わる法案が審議される際には、CBOによる分析が利用される。政治に左右されない不偏不党の分析を行うことで定評があり、米国の財政に関する議論は、時の政権が発表する予測ではなく、CBOが定期的に発表する予測に基づいて行われるのが常である。
政治家にとって「目障り」な存在
共和党も民主党も向こうに回した武勇伝
不偏不党であるがゆえに、CBOは、共和党・民主党の違いを問わず、政治家にとっては常に目障りな存在となってきた。その武勇伝は、枚挙にいとまがない。
民主党にとってCBOは、宿願だった医療保険制度改革を実現するために、乗り越えなければならない高い壁だった。1990年代に民主党のビル・クリントン政権が医療保険制度改革を試みた際には、改革が財政赤字の削減につながるという政権の主張をCBOが退け、むしろ財政赤字を拡大させるという分析を示したことが、改革が頓挫する大きな要因となった。バラク・オバマ政権の医療保険制度改革(オバマケア)でも、政権が主張する医療費の削減効果にCBOが疑問符を付け、大きな論争を巻き起こしている。
一方の共和党も、CBOには悩まされてきた。17年に共和党がオバマケアの廃止法案を審議した際には、「共和党案では保険に入れない無保険者が増加する」とCBOが指摘したために、一気に廃止に向けた機運がしぼんだ。激怒した共和党議員は、CBOで財政予測を行う部署を廃止に追い込もうとしたほどだ。
今回のCBOの見通しの中にも、共和党にとっては耳の痛い分析がある。それは、税制改革が財政に与える影響である。トランプ政権や共和党の議員の間には、これまでの財政見通しに対し、「減税による財政赤字の増加を過剰に見積もる傾向がある」という不満があった。
減税を行えば税収は減るが、それによって経済成長率が高まれば、今度は税収の増加が期待できる。共和党の主張によれば、これまでの見通しには、そうした二次的な効果がきちんと反映されてこなかった。共和党の立場からすれば、二次的な税収増の効果が事前に織り込まれさえすれば、財政赤字の拡大を懸念する必要はなくなり、持論である減税が進めやすくなる。
そうした議論を意識したのか、今回のCBOの見通しでは、昨年12月に成立した税制改革による二次的な効果の分析に、特別に一章が割かれている。そこでの分析結果は、共和党にとっては残念な内容だった。



