こうした事態に直面し、議会は大統領権限の抑制を図った。まず、予算の審議に関しては、大統領の提案に頼っていた従来の方式を改め、議会による独自の予算案をもとに、審議を進める手順が定められた。また、大統領が予算の執行を事後的に取り消そうとする場合には、議会の同意を得ることが義務付けられた。

 このように議会が財政運営における発言力を高めていく中で、その理論武装を担う機関として誕生したのがCBOだった。何しろ大統領は、強大な官僚組織に支えられている。議会としても、徒手空拳で立ち向かうわけにはいかなかった。

大統領への「抵抗勢力」は
党派対立の逆風を受けるか

 大統領と議会の緊張関係に起源を持つという事実は、CBOの弱みにもなり得る。党派対立が厳しさを増す米国では、大統領と議会の緊張関係というよりも、党派間の緊張関係の方がはるかに重要性が増している。「大統領に対抗して議会を支える」というCBOの存在意義を、議会自体が重視しなくなってきても不思議ではない。

 まさに米国では、党派間の緊張関係が全てになりつつある状況を象徴する動きが進行している。トランプ大統領は、3月に成立した歳出法から一部の項目の執行を停止しようと模索している。すでに述べたように、ニクソン大統領当時の経緯から、そうした手続きには議会の同意が必要だが、共和党議員の中にはトランプ大統領の試みに同調する動きがある。

 歳出法の成立に協力した民主党の反発は必至だが、議会による執行停止の合意自体は、民主党の賛成がなくても可能である。ニクソン政権時代には大統領と議会の対立点となった予算の執行停止が、今度は党派対立の焦点として浮上している。

 CBOに対しては、独自の見通し作成を取りやめ、複数の民間機関による予測を取りまとめる機能に特化させようとする法案が、議会に提出されている。トランプ政権で予算編成を統括するミック・マルバニー行政管理予算局長官は、「CBOの時代は終わったのではないか?」ともツイートしている。

 そもそもトランプ大統領に対しては、政策の根拠となる事実を重視しない傾向が指摘されている。それでなくてもCBOは、その出自からして大統領には厄介な存在だ。フェイクニュースの時代に、CBOは孤軍奮闘を強いられようとしているのかもしれない。

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