減税による二次的な税収増は限定的
共和党にとって残念な結果に

 CBOによれば、確かに税制改革による二次的な税収増は発生する。税制改革によって投資や雇用が拡大し、向こう10年間の実質GDPの水準は0.7%高くなる。これに伴う所得の増加等により、向こう10年間の税収は約5200億ドル増加する。

 しかし、こうした二次的な税収増は、税制改革による税収減を取り戻すには至らない。CBOによれば、税制改革による一次的な税収減は、向こう10年間で約1兆8900億ドルとなる。また、財政赤字の増加が国債発行残高を増加させるため、利払い費が同じく10年間で約4000億ドル追加される。さらに、税制改革による二次的な効果という意味では、一層の経済成長で金利が上昇し、利払い費が増加する影響も織り込む必要がある。

 以上を総合すると、税制改革が向こう10年間の米国財政に与える影響は、たとえ二次的な効果を勘案した場合でも、約1兆8900億ドルの赤字増となる。CBOの分析によれば、あれほど共和党がこだわってきた税制改革がもたらす二次的な税収増は、利払い費の変化を相殺する程度にとどまることになる。

 徹底的に忖度をしないCBOの振る舞いに、共和党は憤懣やるかたないはずだ。すでに述べたように、CBOは議会の付属機関である。現在の議会の多数党は共和党であり、CBOの指揮をとる現在の局長も、もとはといえば共和党が選んだ人物である。

 共和党だけではない。民主党のクリントン政権やオバマ政権が医療保険制度改革でCBOに悩まされていた当時の局長は、実は民主党が選んだ人物だった。このように、その時の政治的な環境に振り回されず、どちらの政党にも苦言を呈するのがCBOの真骨頂であり、だからこそ信頼すべき予測機関としての地位を高めてきた歴史がある。

 それにしても、なぜこのような不思議な機関が生まれたのだろうか。実は、その背景には、米国特有の議会と大統領の緊張関係があった。

 CBOの誕生は、1970年代にさかのぼる。それまでの米国では、予算の編成や執行における大統領の力が圧倒的に強かった。特に当時のリチャード・ニクソン大統領(共和党)は、すでに議会が成立させた予算から特定の項目の執行を取り消すなど、議会を軽視した財政運営を推し進めていった。

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大統領への「抵抗勢力」は党派対立の逆風を受けるか

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