中国は、米国からの圧力に不安を募らせてきた金正恩委員長を励まし、米国との直接会談に臨ませたといえる。米朝会議の直前、習近平中国国家主席は金委員長を後押しし、対等な関係で米国に臨む会議へと送り出した。それが、今回の首脳会談が実現した要因の1つといっても過言ではないだろう。
金委員長は、米国などからの圧力を受けて自らの立場に危機感を強めてきた。3月、習国家主席と会談した際、金委員長の表情はこわばっていた。それは、米国からの圧力にどう対応すればよいかわからない恐れの表れであったかもしれない。
その後、金委員長の表情は大きく変化した。南北首脳会談での同氏の表情には、“後ろ盾”を得た安堵感が見て取れた。金英哲副委員長が北京経由で訪米し、ポンペオ米国務長官と事前協議を行ったのも、中国の後押しがあったからだ。
金委員長がシンガポールに向かう際も、中国は最大限の支援を行った。金委員長はシンガポールまで自国の専用機である旧ソ連製のイリューシン62型ではなく、中国国際航空の要人専用機を使った。
同機が便名と行き先を変えながら、中国上空を飛行してシンガポールに向かったことは、中国による北朝鮮への肩入れの強さを示している。トランプ大統領と対面した金委員長が緊張を隠せなかったことを見ても、中国からの支援があったからこそ今回の首脳会談が実現できたといえる。逆に言えば、中国の後押しなくして、首脳会談の実現は難しかっただろう。
中国にとって、北朝鮮は米国との直接対峙を避ける緩衝国だ。中国はそれを失いたくはない。一方のトランプ大統領は中間選挙での苦戦が予想され、実績づくりに躍起だ。中国はトランプ大統領の足元を見て、北朝鮮に朝鮮半島の完全非核化を約束させることで朝鮮半島への影響力を強めたともいえる。その意味で、今回の首脳会談は、北朝鮮だけでなく、中国にも相応の成果をもたらしたと考えられる。



