大きな疑問残る
北朝鮮の核放棄
首脳会談では、米国が最優先に求めてきた“完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)”に関する声明が出されなかった。元々、北朝鮮にその意思がないからかもしれない。本当に北朝鮮が非核化に取り組むか、これまでと同じように不透明な部分が残った。
北朝鮮にとって核兵器の保有は体制維持のための“伝家の宝刀”だ。それを失えば、リビアのカダフィ政権のように、米国などの攻撃に耐えられないことが想定される。実際、首脳会談後も北朝鮮に非核化の意思はないと考える専門家は多い。
表向き、北朝鮮が核の放棄を約束した理由は、これまで同様に時間を稼ぐためのように見える。安全保障の専門家らの間では、非核化には最低でも10年かかるとの見方が多い。その時間は、体制を立て直す時間を確保することにつながる。中国からの経済支援などを取り付けるためにも、国際社会がそれを容認できる環境が必要だ。北朝鮮は表面的に態度を変え、表向き核を放棄する姿勢を示したとも考えられる。
また、国際社会が北朝鮮の核放棄を客観的に検証し、監視していくことは容易ではない。少なくとも、かなりの時間と労力がかかる。まず、米国やIAEA(国際原子力機関)は、北朝鮮が何発の核弾頭を保有しているか、数を正確に把握することが難しい。北朝鮮の自己申告は信用できない。
すでに北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)の技術を確立したとの見方もある。核の脅威を維持するためには、1発の核弾頭をどこかに隠せばよいともいえる。山中や地下に保管施設を造るなど手段はいろいろある。実際に査察を行うとしても、インフラの問題(核関連施設までの道路が整備されていない)、天候(冬場に査察期間を設定する)などが実施を阻むことも考えられる。
そう考えると、北朝鮮にとって核を放棄すると宣言すること自体、難しいことではない。表向き、核の放棄を宣言して体制を立て直す時間を稼ぐためには有効な手段だろう。制裁緩和によって得られた資源を活用して、水面下で核攻撃力を維持・強化することも可能となる。



