イラン戦争で中国とロシアが手に入れた「実戦データ」とは?1発6億円のミサイルが“AIドローン”に苦戦するワケPhoto:PIXTA

トランプ米大統領がSNSにて、米海軍がホルムズ海峡を「逆封鎖」すると表明。原油先物価格は再び高騰するなど混迷を極めている。戦闘の長期化は、イランのAIドローンが、米国やイスラエルの想定以上だったことも影響しているだろう。「第1次AI戦争」とも呼ばれる中、私たちは重要な点を見落としていないだろうか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

イラン戦争がAIの功罪を明確にしている

 今回のイラン戦争について、軍事専門家や安全保障、AIの専門家から「AIを本格的に使った、人類初の戦いだ」との声が上がっている。米国は、新興企業のアンソロピックやパランティア・テクノロジーズなどが開発したAIを、実際の戦闘のシミュレーションや作戦展開などに利用しているという。

 イスラエルも、建造物や重要人物、サイバー空間への攻撃にAIを積極活用していると報じられた。それに対して、イランは安価なドローンにAIを搭載し、ホルムズ海峡の事実上の封鎖や報復攻撃を行っている。イランのAIの活用は、ロシアや中国にとって重要な戦闘データの獲得につながったとの見方も多い。

 現代の戦争においてAIの活用が重要であることが確認されたといえるだろう。一方で、見逃してはならないポイントもある。それは、戦争という非日常的な状況の中で、AIが人類にもたらす功罪が明らかになったことだ。

 AIの功の側面は、効率の悪い、無駄な戦闘が減る可能性がある。それは、生身の人間である兵士の負傷・負担を和らげるだろう。また、低コストでの攻撃・迎撃が可能との指摘もある。

 一方で懸念されるのは、AIが人間である兵士の人格を無視することだ。一度標的として設定されると、たとえ当該兵士が降伏の態度を示していても、勘案されないかもしれない。精度の高いAI兵器自体の危険性も高い。誤って設定された標的が一般的市民でも、攻撃は続けられることになる。仮にAI兵器がテロ集団に渡れば、世界全体の危機は増す。

 将来的にAIが一定の感情を持ち、人間と安全に共同するとの見方はある。しかし現時点では、まだそうした進歩は実現していない。AIの専門家も、AIが持つ危険性を指摘する。人類は、戦争とAIについて、イラン戦争を題材にどのように考えるべきか。