トランプ大統領は
北朝鮮に大きく譲歩した
6月12日に開かれた米朝首脳会談の結果を見ると、まず感じることはトランプ大統領が北朝鮮に大きく譲歩したということだ。最大の懸案事項であった北朝鮮の核開発停止については、具体的なプロセスが示されなかった。一方、米国は北朝鮮の金政権の体制維持を保障するなど、中国に後押しされた金正恩委員長が“ほくそ笑む”姿が目に浮かぶ。
そこまで譲歩して、トランプ大統領は北朝鮮問題で“点数稼ぎ”をする必要があったということだろう。今年11月の米中間選挙を前にして、トランプ大統領の焦りはいかばかりかと推察される。中間選挙では下院で共和党が敗北する可能性がある。予想通りの展開となれば、ロシアゲート疑惑を理由に、トランプ大統領が弾劾訴追される可能性さえ出てくる。それを回避するために、“実績”づくりに奔走するトランプ氏の必死さがうかがえる。
今回の会談から米国が得たものと、北朝鮮が得たものを比べると、北朝鮮が得た果実は圧倒的に大きい。声明では北朝鮮の核放棄の検証に関する文言は含まれなかった。検証なき核放棄は北朝鮮にとって、体制維持のための“時間稼ぎ”につながる。それは、北朝鮮の金委員長には好都合だ。
米国は北朝鮮の非核化実現に向けて、長い道のりを歩むことになる。北朝鮮はさまざまな難癖をつけて、非核化の交渉を進めながら経済政策の全面的な解除などを要求するだろう。米国は、過去に通った道を歩むことになる可能性が高い。
北朝鮮への後押しで
存在感を示した中国
今回の米朝首脳会談の開催を控え、両国政府関係者の事前協議が注目を集めてきた。その背後で重要な役割を果たしたのが中国だ。