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自動車部品大手のデンソーが、半導体大手のロームに買収を提案した。TOB(株式公開買い付け)で買収額は1兆3000億円規模となる見通しもある。一方、ロームは三菱電機、東芝とパワー半導体事業を統合する交渉に入ったことが明らかに。ロームが進むべき道とは。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
デンソーのローム買収提案がきっかけ
三菱、東芝と「パワー半導体」統合へ
国内のパワー半導体業界で再編の機運が高まっている。きっかけは、自動車部品大手のデンソーがロームに買収提案をしたことだった。
デンソーの提案に対して、ロームは三菱電機、東芝のパワー半導体の事業統合に向けた協議開始で基本合意した。ロームとしては、パワー半導体のユーザーであるデンソーとの統合よりも、国内メーカー同士の合従連衡を優先したようだ。
過去数年、ロームは東芝と協業交渉を重ねてきた。ロームのトップは、日本メーカー同士が統合しないと、世界で生き残れないとの考えを固めたようだ。ロームは、水面下で三菱電機とも協議を重ねたという。政府も、そうした協議の加速を支援したとみられる。今回のデンソーの買収提案で、3社の事業統合議論は一気に加速した。
今後の焦点は、ロームに対するデンソーの買収提案、東芝と三菱電機との統合案のどちらの方向に進むかだ。ロームにとって、重要顧客であるトヨタ系のデンソーとの協業は、販売先の安定性でメリットはあるだろう。ただ、同社は、トヨタ系以外にもボッシュなどの大手顧客がある。トヨタ系との結び付きが強くなることで、それら以外の顧客と距離が開くことも懸念される。
もう一つ重要なポイントは、中国企業の脅威だ。パワー半導体に限らず、中国は重要部品の製造に関して、積極的に国内企業を育成している。いずれ中国企業が台頭し、世界の市場を席巻することは十分に予想できる。そのとき、日本のパワー半導体企業が世界市場で生き残れるかが問題だ。
そうした状況を考えると、ロームと三菱電機、東芝の事業統合案には相応のメリットがありそうだ。3社の事業統合が実現すると、中国勢に対抗できる可能性が生まれる。わが国の産業界にとって、重要なモデルケースになることも考えられる。
日本経済の実力低下は深刻だ。一方、日本企業には高い技術力が残っている。複数社が統合することで世界市場を目指す大型企業をつくっていくことは、日本経済全体の競争力を高めることにつながる。ロームを巡る統合案件が、日本経済復活のヒントになりそうだ。







