日本通運がグローバル営業戦略を進化させている。従来の個別企業ごとの最適化から、産業別にプラットフォームを構築する手法に転換し、産業構造の変化に即応できる体制づくりを進めている。ますます複雑化・広域化するグローバル・サプライチェーンに対し、ワンストップで“最適解”を提供していく。
グローバル戦略が進化、旧来型の営業から脱却
日本通運は、日系物流企業最大のグローバルネットワークを持つ。1950年代に海外進出を開始し、日系企業の海外進出と足並みを揃えるかたちで海外拠点を増やしてきた。現在は45カ国・293都市・711拠点(2018年3月末時点)まで拡大し、海外従業員数は2万人を上回るなど、着実に成長を続けている。
その日通が、改めてグローバルロジスティクスに成長戦略をフォーカスしたのは2010年から。加速度を増すグローバル化への対応はもちろんのこと、背景には宅配事業であるペリカン便からの撤退という事業構造の変化があった。
石井孝明・代表取締役副社長
営業部門を統括する石井孝明副社長は「社内的にも大きな変化があった中で、企業間物流に特化し、グローバルロジスティクス企業として成長していくという方針を明確に打ち出した。特に国内事業では宅配の事業軸がなくなったことで、国内にあるグローバル案件の開拓による成長に向けて意識転換を図る必要があった」と語る。
以来、3次にわたる経営計画では「世界日通。」「新・世界日通。」というスローガンを掲げ、新たな切り口によるグローバル戦略を加速している。
営業戦略上の最大の変化は、産業別マーケティングとセールス基盤の強化だ。個別企業ごとに対応していた旧来型の営業スタイルから、「産業軸」の大きな括りで市場を捉える手法に舵を切った。
「個社対応では、どうしても支店やエリアごと、あるいは航空、海運といった輸送モードごとの限定的な対応に陥りがちだった。それを産業別にロジスティクスのプラットフォームを構築する方向に切り替えたことで、産業構造の変化に素早く対応できる体制づくりを進めた」。
15年に行った組織改正では、「航空事業部」「海運事業部」といった輸送モード別の事業部を53年ぶりに廃止し、陸・海・空の組織統合を実施。“グローバル化”をキーワードに、「国内/海外」の区分から脱却する大改革を進めた。さらに、東京のオートモーティブ事業支店をはじめ、名古屋、九州に自動車産業に特化した支店を設けるなど、産業軸への対応を強化した。