民生用でリードする日独
汎用機分野で台頭著しい中国
世界の工作機械市場の現状は、ピラミッド型の図で示すと分かりやすい。図2は機械加工の需要分野と市場規模をピラミッド型に描き、各国の工作機械技術がどのエリアをカバーしているかを示したものだ。
世界の工作機械の技術レベルでは、宇宙や航空機など高度な精密部品を必要とする分野を持つ米国が頂点に立ち、それをドイツと日本が追走している。加工の難度が低い一般部品の分野では汎用工作機械が多用され、台湾・韓国・中国がシェアを拡大している。
米国は、50年代初期にNC工作機械を初めて開発して超精密加工で高い技術力を維持しているが、それは宇宙・航空分野に限られ、民生用のNC工作機械では日本やドイツに後れを取り、競争力を失っている。
台頭著しいのが中国だ。工作機械の需要増が原動力で、生産額では09年から8年連続で世界一になっている(図3)。中国製の工作機械の技術レベルはまだ米日独には及ばないが、欧州のメーカーを積極的に買収して技術吸収を急いでいる。
82年以来、世界最大の工作機械生産国であったのが日本だ。日本の工作機械メーカーは、米国で誕生したNC工作機械の応用開発にいち早く取り組み、70年代後半には「NC工作機械と言えば日本」という評価を確立した。
機械工学が専攻で、世界の工作機械産業に詳しい清水伸二・上智大学名誉教授は、「日本メーカーは、技術をキャッチアップする際の学び方に特徴があった」と語る。先進技術のコピーに終始せず、「なぜ、そうなっているのか」を探り、より良いものにすることで工作機械技術を自らのものとしたのである。
さらに、「日本は四季に恵まれているというが、その気候の変動性は機械の安定性確保とは相反するものであり、厳しい環境に耐えて安定稼働する工作機械を開発してきた実績が、後に世界に受け入れられる大きな原動力になった」(清水名誉教授)。