時間外労働管理で肝心なのは、言うまでもなく、従業員の労働時間を正確に把握することだ。
「タイムカードやパソコンのログイン管理などによって把握できると思い込みがちですが、退勤時刻を記録してから働き続けるケースも少なくありません。実際に従業員がどのように働いているのかを、しっかり確認する必要があるのです」

 労務担当者の目が行き届きにくい現場の実態を把握し、上限を超える労働をなくすためには、現場の管理職に関連法についての知識を理解してもらい、法に沿った働き方をしているかどうかを管理させることが不可欠だ。

「そのためには、働き方改革関連法に関する管理職向けの勉強会を開き、知識と順法意識を高めてもらうなどの取り組みが必要です。そうした社内への働き掛けが求められるようになることで、労務担当者の業務負担はますます増大するかもしれません」と小岩氏は語る。

 雇用形態にかかわらず、同一労働同一賃金ガイドラインに沿った公平な待遇の確保が求められるようになることも、労務担当者の業務負担を重くすることになりそうだ。
「同一労働同一賃金を実現するためには、正社員や契約社員、派遣、パート・アルバイトなどの雇用形態によって分け隔てのない評価制度が必要です。それを整備・運用するだけでも、かなりの労力を要するはずです」

 特に中小企業の場合、労務管理は総務や経理の担当者が兼任するケースがほとんどである。
「日常は総務や経理の仕事に追われ、労務の仕事は片手間程度に処理しているケースが珍しくありません。それも、社会保険や労働保険の手続きなどが中心で、現場の労働状況の把握にはとても手が回らないのが実情だといえます」と小岩氏は語る。