労務のデジタル化で
“人を生かす”業務を増やす
業務のデジタル化が進んでいないことも、労務管理の業務負荷増大の要因となっている。
例えば、ハローワークに出向いて雇用保険関連の手続きを行うと、往復や待ち時間も含めて半日近い時間がかかる。
「国が進める電子申請(e‐Gov)に対応すれば、申請に要する無駄な時間を減らして、その分、人事・労務担当者が本来やるべき仕事に時間を割けるようになるはずです。働き方改革関連法の施行によって、ますます労務担当者の仕事が増えることを考えると、労務マネジメントのデジタル化は避けて通れない道となりそうです」
小岩氏が言う「人事・労務担当者が本来やるべき仕事」とは、優秀な人材の採用や教育、確保などだ。「そのためには、従業員との日常的かつ密接なコミュニケーションが必要ですし、従業員満足を高めるために、各部門の管理職と連携しながら働きやすい環境を整えていかなければなりません。保険の手続きなどテクノロジーによって省力化できる事務処理はなるべく機械に任せ、“人を生かす”業務に、より多くの時間を割けるようにすることが理想なのです」。
従業員満足が高まれば、結果的に顧客満足も高まるということはよくいわれているし、人材のモチベーションが上がれば、生産性向上にもつながる。
小岩氏は、「本来、働き方改革は、社員に働きやすい環境をもたらすことと同時に企業の生産性向上も目的としています。後者がなかなか達成できないのは、その意義を理解し、本腰を入れて改革に取り組む企業が少ないからです。関連法が施行されるのをきっかけとして、本格的に働き方改革を始めてみるべきでしょう」とアドバイスする。