小売業界におけるDX戦略の最前線

「ネットで見た商品を店舗で買いたい」が
75%という事実

 続いて登壇した日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション本部の兼城ハナ氏は、「小売業における店舗顧客接点最前線」をテーマにプレゼンテーションを行った。

 兼城氏はまず、近代小売業の進化の歴史を振り返った。小売業の主役は百貨店から量販店、大型専門店へと移り変わり、1970年代にはバーコードスキャナーが導入されるようになった。このあたりから小売業とITは切っても切り離せない関係となり、1990年代半ばから21世紀初頭にかけてはインターネットの普及とともにEC(電子商取引)が台頭、リアル小売業の破綻や店舗閉鎖が相次ぐ「アマゾン・エフェクト」の時代へと至った。

日本マイクロソフト
ビジネスアプリケーション本部
兼城ハナ氏

 ECが勃興してから「アマゾン・エフェクト」の時代までは、わずか20年ほど。小売業を取り巻く近年の環境変化がいかに急激なものであったかが分かる。

 これは、取りも直さず消費者の購買行動が急速に変化したことを意味する。今やAIやAR(拡張現実)といったデジタルテクノロジーを活用したアプリを一般消費者が当たり前のように使っている。

 「2020年には、100万人がARの世界で買い物をするだろうといわれています。あと1年で、そういう時代が来るのです」と、兼城氏はテクノロジーの進化が今後も購買行動の変化を加速させると強調した。

 こうした購買行動の変化、特に顧客接点の変化に小売業はきちんと対応できているのだろうか。兼城氏は米国で実施された消費者調査の結果を示しながら、それを問い掛けた。

 例えば、「オンラインショップで欲しいものを見つけ、それが近くの店舗でも売っていた場合、どちらで購入しますか」という質問に対して、75%の消費者が「店舗で」と答えている。これは、購買の最終決定に至る顧客接点として、リアル店舗がECより優位にあるということを示唆している。

 「(インターネットが普及した環境で育った最初の世代である)ミレニアル世代でも、オンラインで見たものを店舗で触ったり、自分の目で確かめたりしてから買いたい、という意見が非常に多いのです」(兼城氏)

 一方、70%の消費者が「オンライン上に自分の情報や購買履歴がある場合、店舗でもその情報を把握してほしい」としているのに対して、約2万社の企業を対象にして行った別の調査では、「お客さまのモバイルにおけるカスタマージャーニーを把握できている」と答えた企業は、わずか20%だった。

 「消費者は、ECサイトでもモバイルアプリでも、そして店舗でもパーソナライズされた購買体験が提供されることを期待しているのです。テクノロジーの進化にも敏感で、その期待値はますます高まっています。しかし、大半の企業がモバイルのカスタマージャーニーすら把握できていないのが現実で、顧客の期待に応えられていません」(兼城氏)

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