唯一の「痛み分け」は文会談
だが共同経済事業は進まず

 米中ロ韓の首脳との計10回の会談のうちの唯一、痛み分けともいえるのは、文在寅韓国大統領との3回にわたる南北首脳会談だ。

 文氏は「朝鮮半島に平和が定着した」と宣伝するため、北朝鮮が嫌がった南北軍事境界線沿いの軍事宣伝放送を中止したばかりでなく、境界線付近での無人機などによる偵察飛行も禁じた。

 これらは、北朝鮮にとって少なくない利益をもたらしたといえる。

 ただ、北朝鮮が期待を寄せた開城工業団地事業や金剛山観光の再開、南北の鉄道・道路連結事業などは実施されないままになっている。

 韓国の与党議員によれば、4回目の南北首脳会談の開催を求める文在寅政権に対し、北朝鮮はへそを曲げ、「会談を開く条件は、最低でも金剛山・開城工業団地の再開」と主張している。

 他方、韓国も現在、南北対話を進展させられない状況に追い込まれ、文在寅政権は窮地に陥っている。

 南北がお互いに満足できない結果となっており、対話の主導権を握る北朝鮮がやや有利ながら痛み分けという状態だろう。

 では、他の首脳外交で、金正恩氏が好む「トップダウン外交」の成果は上がったのだろうか。

非核化でサイン直前だった
トランプ大統領をポンペオ氏が制止

 米朝首脳外交については、金正恩氏は、トランプ米大統領の関心を長くつなぎとめている数少ないリーダーといえる。

 朝鮮中央通信は5月21日、バイデン前米副大統領を「知能が低い」とこき下ろす論評を掲載したが、これは2月にトランプ氏がツイッターで使った表現をそのまま借用したものだ。

 トランプ氏は早速、日本滞在中の5月26日、ツイッターで「もしかして、それ(朝鮮中央通信の論評)は私にシグナルを送っているのか」と喜び、「北朝鮮はいくつかの小さな兵器を発射した。我が国民とそれ以外の人々の一部は動揺したが、私は違う」と強調した。

 トランプ氏は自分を尊敬しない人間を嫌うとされる。「私はゴルフはやらない」と言った文在寅氏に対する冷淡な態度もその一例だと思う。

 金正恩氏と並んで、トランプ大統領の関心をつなぎとめているのは安倍首相だが、日本も北朝鮮も、このトランプ氏の人間的特性をよく研究している。ひたすら持ち上げることで、関係の維持を図っているとはいえる。