北朝鮮は巧みに
独裁体制を維持している
朝鮮半島は、米・中・露の大国の利害が複雑に絡み合う地政学の要所だ。かの地で北朝鮮は、核の脅威を用いた強硬姿勢と、“ほほえみ外交”ともいわれる柔軟姿勢を使い分け、したたかに金一族の独裁体制を維持している。
貿易戦争が激化し、中国は米国との関係が悪化している。中国は北朝鮮に便宜を図ることで、朝鮮半島に関する国際議論の主導権を確保しておきたいはずだ。6月12日、シンガポールで開かれた米朝首脳会談を控え、金正恩委員長が中国国際航空のチャーター機を使いシンガポール入りしたのはそのいい例だ。
ロシアはトランプ政権との関係を重視している。同時に、極東地域での影響力を示すために北朝鮮との関係も維持・強化したい。すでにプーチン大統領は韓国と対北朝鮮共同事業の可能性を検討していると見られる。
北朝鮮は中国やロシアの事情をうまく利用し、制裁の緩和・解除に向けた地ならしを進めてきた。それに加えて、中間選挙のために点数を稼ぎたい(支持を増やしたい)トランプ大統領にもうまく便乗している。北朝鮮は、トランプ大統領の“焦り”につけ込み、成果を収めつつある。金正恩委員長は、独裁体制を維持するための時間稼ぎに成功しているといってよい。
韓国が軍事演習を中止したことを受け、北朝鮮との対話ムードが高まっていると前向きにとらえる報道もある。ただ、現実を冷静に分析すると、それは思い違いだろう。現状は、北朝鮮にうまく乗せられているように見える。
大国の政治モメンタムで
したたかに生きる北朝鮮
現在の朝鮮半島情勢は、北朝鮮にとって有利に動いている。重要なことは、北朝鮮が米中露、および米国の利害を反映した緩衝国=韓国、の政治的なモメンタム=勢いにうまく乗っていることだ。