デロイト トーマツ グループが今年6月に開設したイノベーション創発施設「Deloitte Greenhouse」(以下、Greenhouse。詳細はこちら)では、ラボと呼ばれるさまざまなセッションをCxO(経営幹部)向けに提供している。今回はその中から、アナリティクスをテーマとした「IDO Lab」について紹介する。
IDOとは何か
なぜIDOを目指すべきなのか
「IDO」(Insight Driven Organization=インサイト駆動型組織)とは、組織横断的なアナリティクスから得られるインサイト(洞察、深い理解)を生かして、意思決定プロセスを最適化する組織を意味する。デロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)がグローバルで提唱しているコンセプトだ。
組織が保有する膨大なデータを集計・分析できるアナリティクス技術の進展に伴い、「データ駆動型組織」の重要性が指摘されるようになっているが、IDOがデータ駆動型組織と大きく異なるのは、「データそのものを扱っていくことよりも、いかに経営に役立つ形でデータを料理していくか。すなわちデータからインサイトを得るためのアナリティクスを重視している点です」と、有限責任監査法人トーマツ デロイトアナリティクス パートナーの神津友武氏は語る。
なぜ、IDOを目指す必要があるのだろうか。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といったデジタル技術が実用可能になったことで、さまざまなツールを導入したり、データ基盤の整備に取り組んだりする企業が増えてきた。しかし、集めたデータを意思決定プロセスにどう組み込めばいいのか、課題解決にどう活用するのかといった点で、多くの企業が悩んでいる。それはデータを収集したり、加工したりする段階で、終わってしまっているからだ。データから何らかの意味を読み取り、データをインサイトに転換しなければ、意思決定プロセスに生かすことは難しい。このデータからインサイトを得るプロセスを、IDOではアナリティクスと定義する。
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナーの桐井健之氏は、「データから生まれるインサイトを活用し、収益に結び付けていくには、デジタルツールやデータ基盤を整えるだけでは不十分で、それらを組織横断的に活用する協働体制やトップのリーダーシップが不可欠です」と指摘する。
そして、IDOへと変革することができれば、より迅速で、より低コスト、そして、より良い意思決定ができるようになるはずだ。その結果として、製品やサービス、あるいはビジネスモデルを革新でき、企業価値の向上が可能となる。
こうしたIDOに変革していくためには、戦略、人材・組織、プロセス、データ、テクノロジーという5つの領域においてさまざまな課題を解決していく必要がある。
「Greenhouseにおいて開催するIDO Labでは、CEO(最高経営責任者)をはじめ、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)、CDO(最高デジタル責任者)、CIO(最高情報責任者)といったCxOの方々に参加していただき、デロイト トーマツが世界共通で体系化したアジェンダとフレームワークを活用しながら議論やプロトタイピングなどを進め、IDO変革のロードマップを個別のお客さまごとに作成します。そして、変革の実行までを私たちがトータルで支援します」。デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナーの大平匡洋氏は、IDO Labについてこのように説明する。
デロイトアナリティクス
パートナー
神津友武氏
ちなみに、神津氏はデロイト トーマツのデータサイエンティストチームを率いており、桐井氏はインダストリーごとに分かれた専門家チームのうち製造業を統括する立場、大平氏はアナリティクスやデータマネジメントを担当している。IDOへの変革は、いわば企業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)であり、それを支援するためにデロイト トーマツもクロスファンクショナルチームを組成する。当然ながら、企業が抱える課題によっては、人事・組織や財務、法務、サイバーセキュリティなど、デロイト トーマツの各分野のプロフェッショナルが支援チームに参加することになる。