異端を排除する
「黒い羊効果」

 Aさんがメンバーに何かを吹き込んだことは容易に分かりました。一番年下で社歴の短い近藤さんが、室長となって高い給与をもらっていることや、営業企画室のメンバーや会社をバカにしていたなどというストーリーが展開されていたようです。

 わざと近藤さん抜きで会議を設定して事後報告もしない、話しかけても聞こえないふりをする、「若い方は言っていることがよく分からない」などと言って笑われる、というようなつらい毎日が続きました。

 このような“イジメ”は、学校や職場といった集団の中でよく起こります。近藤さんのように集団の一員でありながら、リーダーとしてはおろか仲間としても見なされず、“のけ者”あるいは“厄介者”として扱われます。

 心理学では、「白い羊」の中に「黒い羊」がいると、“異端”として排除される「黒い羊効果」と呼ばれています。

 集団の中に近藤さんのような「黒い羊」がいることで、その他大勢の白い羊たちの一体感が強まり、仲間意識が高まるという状況にもなります。

 企画営業室でも、Aさんを中心として結束力が高まり、近藤さんをネタにして飲み会で盛り上がっていたようです。Aさんの存在感や権力も、かえって大きくなっていきました。

 Aさんをリーダーとした白い羊たちによる近藤さんへの“イジメ”は次第にエスカレートし、誰の目から見ても近藤さんは日に日に顔色が悪くなり弱っていきました。

 当初は、「これはさすがにやりすぎでは……」と、近藤さんに同情して話しかけてくる人も数名いました。近藤さんが話しかけられるのは、決まってAさんや他のメンバーの目が届かないときでしたが、次第にそういうこともなくなっていきました。

「集団圧力」が生み出す
「同調行動」とは

 背景にはどのようなメカニズムがあるのでしょうか――。

「黒い羊効果」で凝集性の高くなった集団内では「集団圧力」がさらに強くなり、人々は集団にとどまるため、そして自分が「黒い羊」にならないよう、集団のルールに合わせて自分の行動を変えるようになります。

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「黒い羊」になってしまったら

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