個体管理デバイスを協力企業と共同開発
同社が仕掛ける“秘策”はこれだけにとどまらない。プロジェクト最大の目玉ともいえるのが、半導体の世界的企業・インテルの技術を活用し商品化した「GCWA(Global Cargo Watcher Advance)」。GDPが流通過程において求める最大の要件の一つである温度管理をリアルタイムで“見える化”できるツールだ。
「これまでの温度管理は、倉庫内やトラック内といった“空間”レベルでの把握にとどまっていましたが、GCWAを使うことで医薬品の個体レベルで温度や湿度、衝撃などの動態管理が可能になります。空間から個体へ、より精度の高い品質維持が実現できるのです」(石井副社長)
また、従来の温度管理デバイス(ロガー)は、配送完了後に返送されてきたロガーからデータを取得する“事後確認”が一般的だったが、GCWAはウェブ上にリアルタイムで計測データがアップされ関係者が情報共有できるため、仮に温度逸脱などの異常が起きた際にも、早期発見につながり、すぐに対処することが可能になる。
「インテルの主業である半導体も非常に精密で、輸送中の温度や振動に気を配っています。そうした背景もあり、新たなデバイスの開発に関心を持っていただき、協業が始まりました」(石井副社長)
さらに、日通では物流情報だけにとどまらず、受発注・決済・所有権移転といった流通上の証跡管理を一元化できる情報サービスプラットフォームの構築も計画している。言わば物流情報と商流情報が統合管理できる医薬品情報の総合プラットフォームだ。
プラットフォームの構築に当たっては、ブロックチェーンの技術を活用することで、製薬メーカーや物流会社、卸、医療機関といった医薬品サプライチェーンの関係者が共同利用できるオープンプラットフォームにしていく考えだ。
「ブロックチェーンの分散台帳技術を使うことで、履歴やトレーサビリティーがより明確になるとともに、関係者が全てのプロセスにおける情報を共有化することができます。異常事態が発生した場合も、どの段階で何が問題となったかをすぐに突き止めることができます」(石井副社長)