製薬工場で作られた医薬品の品質をそのままに届ける―。世界中で医薬品の安心・安全が求められる中、日本通運が医薬品物流のサプライネットワークの構築に動き出した。目指す姿は医薬品物流・流通におけるプラットフォーマーだ。
全社プロジェクト「Pharma2020」
約100兆円ともいわれる世界の医薬品市場。その中で日本は第3位の約10兆円の市場規模がある。
近年は、希少疾患や難病を対象としたスペシャリティー医薬品、バイオ医薬品などが増加し、安心・安全のために、これまで以上に厳格な品質管理が求められるようになっている。
国内では2018年12月、厚生労働省が日本版GDP(Good Distribution Practice=適正流通基準)ガイドラインを発出。流通過程においても製造工程と同様に統一された品質管理基準を定めた。ガイドラインは将来的な法制化も検討されており、医薬品流通は大きな変革期を迎えている。
石井孝明・代表取締役副社長
そうしたタイミングを捉え医薬品物流への本格参入を決めたのが日本通運。今期から始まった新経営計画「日通グループ経営計画2023 非連続な成長~Dynamic Growth~」において医薬品産業を重点産業の一つに位置付け、特別プロジェクトチーム「Pharma2020」を編成して全社的な取り組みに着手している。
プロジェクトでは、全国4カ所(埼玉県、大阪府、福岡県、富山県)に医薬品専用センターを新設する他、GDP基準に準拠した医薬品専用車両を開発し、全国を網羅した医薬品サプライネットワークを構築する。投資額は初期投資だけでも約650億円。将来的な投資を含めれば1000億円を超えることも予想され、その金額からもこのプロジェクトにかける同社の本気度がうかがえる。こうした施策を通じて、18年度に約160億円だった医薬品産業の売上げを、23年度に2倍以上となる約360億円まで引き上げる計画だ。
同プロジェクトを指揮する石井孝明副社長は「プロジェクトは倉庫、IT、オペレーション、品質、営業、車両の六つのカテゴリーごとに役員を責任者として配置しており、21年1月から本格的な業務開始をお客さまにコミットしています」と語る。