オープンプラットフォームで共同物流を展開
中:輸送時の温度変化から製品を保護
下:車両格納型接車バース内部。トラック全体を倉庫に引き込み、安全に積載作業を行う
現在急ピッチで建設が進んでいる全国4拠点の医薬品専用センターでは、GDPガイドラインにのっとった設計・仕様を徹底。例えば、医薬品を積み降ろしするトラックの車両全体を倉庫ドックに引き込むことで外気を遮断する「格納型接車バース」を採用して温度管理を徹底する他、大型エアシャワーで製品外装箱に付着している異物や虫などを取り除くなど品質維持のための工夫が随所に施されている。
また、医薬品専用車両の開発では、全車統一スペックを採用して車両ごとの性能のばらつきを排除するとともに、温度管理をはじめとする各種機能を装備。長距離輸送用の車両には、輸送時における万が一のエンジントラブル発生による温度逸脱リスクを想定してサブエンジンも搭載する。
既存の物流センターを改修したり、専用車両を改造するのではなく、GDPガイドラインにのっとったスペックを一から構築していく。同社はそこに優位性を見出している。
また同社はこうした物流インフラを活用して製薬メーカーに共同物流を呼び掛けている。石井副社長は「製薬メーカーは従来、物流会社と個別にタイアップして独自のオペレーション体制を築いていましたが、流通過程における管理基準がより厳格化される中、個別の取り組みではコスト面で限界が生じてしまいます。GDPという統一基準に準拠して均一な品質が担保されたオープンなプラットフォームをつくり、そこに製薬メーカーに参加してもらうことで、メーカー各社に共同化メリットを還元できるのです」と語る。
同社が現在、想定しているのは、日本の医薬品流通の97%を占めるメーカーから医薬品卸に納品するまでのサービスだが、将来的には医薬品卸の在庫を同社の専用センターで保管するスキームも視野に入れている。「同一拠点内で製薬メーカーから卸への所有権の移転を行うことができれば、ムダな輸送が発生せず、物流プロセスをより効率化することが可能になります。それも業界統一的な管理基準で運営することのメリットの一つです」(石井副社長)。