“データ×AI”活用の早道は「失敗から学ぶ」こと
早くスタートした企業が、競争優位を生む

トレジャーデータとDataRobot による特別対談

たくさんの失敗を経験して、人もAIも賢くなる

──2020年春から始まる5G(第5世代移動通信システム)の商用化やIoTセンサーの普及などにより、企業が蓄積するデータ量は爆発的に増大していくと予想されます。データとAIによって新たな価値を生み出していくために、企業の経営者が理解しておくべき本質は何でしょうか。

芳川 AIやデータを活用していく上での大前提は、「たくさん失敗すること」です。リーンスタートアップの成功の秘訣として、「Fail fast, Fail often(早く失敗しろ、たくさん失敗しろ)」という言葉がありますが、AIやデータ活用についても全く同じことがいえます。

シバタ 鋭いですね。

芳川 日本に限らず大企業の多くでは、これまで「失敗しないこと」に重きが置かれてきました。そうした企業はデータを集めることはできるかもしれませんが、その次のステップに進む段階で大きな壁にぶつかりやすい。「データが完全に集まらなくても始めてみる」「失敗を恐れずにやってみる」ことができないからです。データ活用はそのような企業文化を変革する良い機会ですが、逆に変革できずに硬直化したままの組織は、これからのAI革命の時代に生き残っていくのは難しいかもしれません。

シバタアキラDataRobot Japan
チーフ・データサイエンティスト
AKIRA SHIBATA
英ロンドン大学で物理学博士号取得後、米ニューヨーク大学研究員時代に加速器データの統計モデル構築を行い、「神の素粒子」ヒッグスボゾン発見に貢献。ボストン コンサルティング グループを経て、白ヤギコーポレーションの創業者兼CEO(最高経営責任者)。2015年より現職。

シバタ 早く始めることで得られる“先行者利益”は、非常に大きなものがあります。失敗することでデータの使い方がうまくなりますし、失敗を通して自社のAIをより賢くすることができます。早くスタートした企業ほど、データから価値を生み出すことにどんどん成功するようになる。そういう正の循環が生まれるのです。

芳川 失敗を通して人とAIが多くの経験を積むことは重要ですね。

シバタ 当社のお客さまの中には、DataRobotを使って何をやっているのか教えてくださらない企業もあります。どんな失敗をして何を得たかが自社の競争優位につながると考え、同じツールでも他社とは違う使い方をすることでビジネス上の差別化を図ろうとしているからです。私は、その考えは正しいと思います。

 今はまだ、多くの企業がAIをどんな目的で、どう活用すべきか検討している段階ですが、これまでにない活用法を生み出して競争優位を獲得するためには、多くの失敗を繰り返して経験を積むことが肝心です。

──経営者から「失敗するな」と言われたら、誰も新たなことにチャレンジしなくなりますね。

芳川 失敗とは「うまくいかない方法が分かる」ということです。それが分かることは、一つの“正解”を見つけたのと同じことです。

 もちろん、データ活用でも失敗を避けるべき分野があり、例えばセキュリティ対策はしっかりとやらなければいけません。しかし、“攻めのデータ活用”の取り組みでは失敗が当たり前であり、それを繰り返すことで徐々に活用がうまくなっていくのです。

 実際、米国の企業でもデータ活用で成果を出しているところは、たくさんの時間をかけて多くの失敗を重ねています。失敗が続いても、とにかく粘り強くやっている。成功の陰には多くの失敗があり、それを経営者が許容しているのです。

シバタ 失敗は学びだということですね。

芳川 その通りです。そして、これはスタートアップの本質でもあります。スタートアップがなぜアジリティを重視するのかというと、失敗して当たり前だから、何度も失敗して学び、早く成長するためなのです。

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