データ駆動型企業への変革、AI活用の6つの要諦
日本企業がAIの時代を生き抜くために(前編)

アナリティクス&AI活用の成功のポイントとは

 アナリティクスやAIの活用が進まない理由として、PwCの調査でCEOが最も多く挙げたのは「データ分析の専門家がいないこと」「データが(組織内で)分断されていること」「データの信頼性が低いこと」などであった。

 こうした調査結果やグローバルでの企業支援実績などから、PwCではアナリティクスとAIを導入する上での6つの要諦をまとめた。

■アナリティクス&AIを導入する上での6つの要諦

 以下では、上記の6つの要諦を踏まえて、アナリティクスとAIを導入する際の課題と、その克服策について解説する。

 まずは要諦の1つ目である「経営判断から始める」について。これは、言葉を換えれば、「他社に先駆ける心意気でトップから現場に落とす」(藤川氏)ということである。

 PwCでは日本企業のデジタル化の状況を調べるために、従業員500人以上の企業を対象に「Chief Digital Officer(CDO、最高デジタル責任者)調査」(2018年)を行った。

 ちなみに、このCDO調査における”デジタル化”とは、「デジタルによる事業環境や消費者・顧客のマインド、行動の変化に企業が対応するための変革活動」と定義しており、DXとほぼ同義と考えていただいて差し支えない。

 同調査でデジタル化の推進状況を尋ねたところ、92%の企業が何らかの形で「推進している」と答えたものの、「同業他社に先駆けて(推進している)」は26%にとどまり、「同業他社並み」が55%、「同業他社がデジタル化を導入し始めてから」が19%と、他社と横並びか後追いの企業が圧倒的に多いことが分かった。

データ駆動型企業への変革、AI活用の6つの要諦日本企業がAIの時代を生き抜くために(前編)河野美香 PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
アナリティクス & AIトランスフォーメーションソリューションのリードを担当。DXおよびIT部門の中長期計画策定、データ利活用組織の立ち上げ支援、データ分析基盤の構想策定など、AIトランスフォーメーション推進に関する豊富なコンサルティング経験を持つ。

 「これは2年前の調査ですが、今も状況は大きくは変わらないと思います。アナリティクスとAI活用を経営のトップアジェンダに掲げていても、DX推進に向けてリスクを伴う投資をする段階になると他社の実績を気にするCEOが多いのは、日本企業でよく見られる傾向です」(河野氏)

 DXで失敗する典型例としてよくあるのが、推進目的があいまいなまま、「DXは重要なテーマだから検討しなさい」とCEOが部下に丸投げするケースや、「他社で成功実績はあるの?」と様子見をするケース、あるいは、「実行は君たちに任せる」と自ら変革をリードしようとしないケースなどだ。

 前述の「CDO調査」で、デジタル化(DX)推進に対する社内での理解度を尋ねた質問では、推進の責任者がCEOである場合、「ほとんどの従業員の間で理解されている」割合が54%であったのに対して、責任者が執行役員クラスの場合は31%、部長クラスの場合は23%と低下した。

 「この調査結果からも、経営判断としてスタートし、経営トップがしっかりコミットしていかないことには、アナリティクスとAIを駆使したデータ利活用、およびそれを軸としたDXを持続的に推進することは難しいといえます」。PwCコンサルティングの山上真吾氏は、そう強調する。

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