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日本にしかできないDXを実現させる
日本企業がAIの時代を生き抜くために(後編)

PwCコンサルティング合同会社

前編では、データアナリティクスとAI(人工知能)の活用状況と活用推進の阻害要因、およびアナリティクス&AI導入を成功させるための6つの要諦について、PwCコンサルティングの藤川琢哉氏、河野美香氏、山上真吾氏に聞いた。後編では、6つの要諦を踏まえて導入を進めていくためのフレームワークや具体的なユースケース(活用例)などについて、引き続き3氏に解説してもらった。

AI活用推進組織をつくったが、うまくいかないという悩み

 PwCコンサルティング(以下、PwC)でアナリティクス&AIトランスフォーメーションを担当するチームには国内約700人、グローバルでは約2万5400人のデータサイエンティスト、データアーキテクトなどが在籍し、データアナリティクス戦略の策定から実行までを幅広く支援している。

 日本企業からの相談は「どんどん増えている」(藤川琢哉氏)とのことだが、この2〜3年で相談内容に変化が見られるという。

「3年くらい前までは、『AIを活用したいが、どう進めればいいか教えてほしい』といった相談が多かったのですが、最近では『AI活用推進組織をつくってやってみたけれど、うまくいかなかった』というご相談が増えました」(藤川氏)

 PwCでは、これら日本企業から寄せられる相談に応じてきた実績から、企業がアナリティクスとAIを導入する際に発生する課題を以下のように整理した。

■図表1│アナリティクス&AIを導入する際に発生する課題

構造的課題

・どのデータを活用すればいいのか分からない
・データの仕様が整理されておらず、データ調査に時間がかかる
・専門スキルを持つ社員がおらず、分析の設計ができない
・データの分析結果を実際のビジネスで活用できる解釈につなげられない
・ITインフラが古く、大量のデータを分析できない
・システムが乱立し、維持費が高騰する

組織的課題

・アナリティクス担当者が各部門に分散している。また、個人のスキルに依存している
・新規事業創出への関心が薄く、アナリティクス活用のモチベーションが低い
・AI活用推進組織への投資対効果に漠然とした不安があり、意思決定できない
・誰が責任を負うのか、ガバナンス構造が不透明
・組織横断的な問題に対する解決力が欠如している

行動的課題

・直感的な意思決定が根付いており、データドリブンな意思決定を行う習慣がない
・失敗を許容し、素早く軌道修正する組織文化がない
・情報共有が不足している
・短期的な解決策を重視し、長期的な視点が抜け落ちている

 図表1で示した諸課題は、「グローバルで共通するもの」(河野美香氏)だという。一方、日本企業に特徴的な課題もある。その一例として藤川氏が挙げるのが、データサイエンティストに対する誤解だ。

 高度なデータ分析力を持ち、AIにも精通したデータサイエンティストは日本国内では引っ張りだこだが、データ利活用のキーマンとしての資質に欠けるデータサイエンティストが散見されるという。

藤川琢哉
PwCコンサルティング
ディレクター
CIOアドバイザリー・サイバーセキュリティチームで全社IT・セキュリティトランスフォーメーションに従事した後、PwCのデータアナリティクスチームに設立メンバーとして参画し、10年超にわたってデジタル領域のコンサルティングに関わる。現在は、CDO補佐の役割で多数の企業のDXを支援している。

 そもそも、データサイエンティストの人材定義とは何だろうか。データサイエンティスト協会では、「データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」と定義。そして、データサイエンティストに求められるスキルとして、ビジネス(課題解決)力、情報処理・AI・統計学などのデータサイエンス力、データサイエンスを実装・運用できるようにするデータエンジニアリング力の3つを挙げている。

 だが、この3つの力をバランス良く兼ね備えた人材はまれだ。「特に、ビジネス課題を特定して、解決策を設計し、実行できるデータサイエンティストは、なかなかいません」(藤川氏)。

 だとすれば、自社で育成するしかない。「データサイエンス力やデータエンジニアリング力がある人にビジネス力を付けさせる、逆にビジネス力のある人材にデータサイエンス力やデータエンジニアリング力が伸長していく教育を施す。どちらでもいいのですが、長期的視点で人材投資をして、内部育成することが持続的な競争優位を獲得することにつながります」(河野氏)。

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