ビジネス実装を大前提にすることでPoC倒れを避ける
要諦の4〜6つ目について、河野氏は次のように解説する。
AIのアウトプットの品質は、学習させるデータの信頼性に左右される。だからこそ、4つ目の要諦である「データの信頼性を担保する」ことがAI導入の大前提となる。「入力されているデータの信頼性が低いと、AIによる分析結果も信頼性に足るものにはならず、実際のビジネスでは使えません」(河野氏)。
5つ目の要諦である「本格導入前にデモにより価値を展観する」とは、AIの適用領域によってどのようなアルゴリズムやAIモデルが有効かをPoCなどで確認するということだ。
AI導入プロジェクトにおいて、「PoC倒れ」という言葉がよく聞かれる。PoCはいろいろやってみたけれど、ビジネスでの実装や商用化にまでつながらないというケースだ。
「何か面白い分析結果が出るかもしれない」と、目的が明確でないままにAI導入プロジェクトを始めたり、「とにかく精度を上げよう」と分析精度にばかりこだわったりしていると、PoC倒れに終わることが多い。
「例えば、機械学習モデルを使って需要を予測し、在庫を適正化しようというプロジェクトであれば、どの程度在庫を削減するかという目的によって、どれだけの予想精度を出すかという手段は変わってきます。PoC倒れに終わらせないためには、あくまでも本格導入してビジネスの目的を達成する前提で、PoCに取り組むことが重要です」(河野氏)
そして、6つ目の要諦である「検討開始時からリスクヘッジ方針を検討する」については、典型例として昨今顕在化しているプライバシーの問題などが挙げられる。ウェブブラウザーのクッキーや購買履歴などを含めた個人情報の利活用について、世界中の消費者は非常に敏感になっており、その利用を規制しようという動きが広がっている。
「どのようなデータをどう活用すると、どんなリスクが発生し得るのかを事前によく検証しておくことが、アナリティクスとAIの導入によるデータ利活用の持続性を担保することにつながるのです」(河野氏)
前編に当たる本稿では、データアナリティクスとAIの導入状況と、それらの活用を推進する上での組織的課題、そして、その課題を乗り越えるための6つの要諦について主に解説した。
後編(6月29日公開予定)では、PwCがこれまでデータアナリティクスとAIの導入を支援してきた実績に基づいて、専門人材の育成の在り方や、アナリティクス&AIのユースケース(活用例)、アナリティクス&AI導入の指針となるフレームワークなどについて、具体的に紹介する。
(後編に続く)
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