経営の3大要素は「方向付け」「資源の最適配分」「人を動かす」

 さらに小宮氏は経営の3大要素として「方向付け」「資源の最適配分」「人を動かす」を挙げた。このうち「資源の最適配分」は、企業にあるヒト、モノ、カネ、時間などの資源を最適な形で配分するということだが、ここで注意点として「長所を生かす」「公私混同をしない」の2点を挙げた。

 長所を生かすと一言で言っても、企業全体で行うとなるとなかなか難しい。上司が部下の短所を見付けて、時間をかけて直させるというのはよくあることだが、これでは、部下が短所を直している間の時間が無駄になってしまう。さらに、その部下に指導役の先輩が付いていたとしたら、2人分の時間を無駄にしていることになる。

 小宮氏は「そんな無駄なことをするよりも、長所を見付けて、それを生かして伸ばす方が良い」と話す。たとえその従業員に短所があったとしても、その短所を補えるパートナーを付ければ済む。例として、プロ野球やプロサッカーのチームで、監督が代わっただけなのに成績が大きく伸びる、あるいは反対に成績が極端に落ちるときは、監督が選手の長所を見付けて、うまく使えているかどうかが大きく関係していると指摘した。

 「公私混同をしない」という点については、「資源の最適配分は理論的、論理的にできると思っている人もいるが、どうしても私利私欲、公私混同に走ってしまいがちだ」という。小宮氏は自身が経営する企業で、資源の最適配分を考えるときにどのように公私混同を避けているか、その基準を紹介した。それは、「部下が同じことをやっても許せるか」というものだ。

先頭に立って「やってみせる」ことで、人はついてくる

 続いて小宮氏は「人を動かす」について、リーダーシップは理屈ではないと強調した。「理屈で人が動くのなら、自分を動かしたい」という言葉を聞けば、納得が行くのではないだろうか。その上でリーダーシップ、つまり「人を動かす」には何が必要かという問いに対し、「指揮官先頭」と「責任を取る覚悟」の2つを挙げた。

 指揮官先頭は、指揮官が率先して先頭に立って行動するという覚悟を指す。ここで引き合いに出したのは、山本五十六氏の有名な言葉「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」である。まずは自身が「やってみせ」ないと、人は動かない。さらに、人が付いてこないリーダーは得てして「言って聞かせて」から入りがちと指摘した。リーダーは、トラブル対応や、重大な方針決定など、いざというときは自身がやって見せないと部下は決して付いてこないということである。

「方向付け」には訓練が必要

 最後の「方向付け」について小宮氏は、「経営でもっとも大切なこと」と語り、すぐにできるようになるものではないと、その難しさを表現した。「現在、経営者として企業を運営している人はできているが、これから社長になる人を育てるとか、自分はこの先社長になるという人は、訓練しておかないと、社長になったときに困るという。

 そのための訓練法として小宮氏が挙げたのが「新聞を読むこと」。とはいっても、すべての記事に目を通すのは大変だから、「リード文が付いているような大きな記事」に絞って、リード文だけを読むのだという。すると、興味がない話題でもリード文を通して大まかな内容をつかめる。続けていくと、世の中の流れが見えるようになるという。関心の幅が広がれば、さらに細かく見えるようになるとも言う。

 また、世の中を見るとき、そして人を見るときに「素直に見ることができるかどうか」も非常に重要だと語る。小宮氏は「素直でない人は、人の話を聞けない。すると、次第に話してくれる人がいなくなっていく」と説明した。企業が進むべき方向を示すには、世の中の流れを読み、人の話を素直に聞き、自身で考えて結論を出す必要があるということだろう。