AfterCOVID-19の社会に向けて、
人事が解決すべき7つの課題
●最適通勤頻度の設定
●企業の地理的立地・分散性の設定
●社員のライフスタイルの多様化への対応
●採用のグローバルメガコンペティションの発生
●マネジメント能力の二極化への対応
●仕事選びの要素も変化
●学習格差の拡大
1つ目の課題「最適通勤頻度の設定」とは、“週に何日、オフィスに出勤することにするか”というものだ。山口氏はこれを「来年の就職活動で学生が皆気にする最大のポイント。この課題に答えられない企業には学生も怖くて行けない」と指摘し、企業が自身で決めなければならない課題だと強調した。これは、「他社が何日にしているのか」とはまったく関係がなく、単純に生産性の問題である。「会社の哲学が求められるし、上から降りてくることでもない。人事部が自発的に動くべきこと」と話した。
2つ目の「企業の地理的立地・分散性の設定」は、テレワークが当たり前になったまさに今発生していることである。日本の住宅事情を考えると、在宅勤務のスペースを割く余裕がない家は多い。特に都心部に近くなるほど、この問題は顕著になる。
「在宅勤務をしたいが、家では仕事ができない」となった結果、オフィスでもなく、自宅でもない、サードプレイスのようなワーキングスペースを、企業が鉄道沿線に分散的に設置していく必要が出てきていると指摘。今後さらに通勤の頻度が減れば、これまで以上に遠隔地に住む従業員も出始めるとし、「地理的な立地分散をどうするか、企業としての戦略や哲学が求められる」と問いかけた。
「どこに住んでも良い」となれば、
世界中の企業を相手に採用競争が始まる
3つ目「社員のライフスタイルの多様化への対応」とは、従業員の生活の質に関係するものだ。ここで山口氏は、「就職活動中の学生は、給料が同じならば通勤頻度が低く、どこに住んでも良いという会社を間違いなく選ぶ」と語り、地方に住める会社の方が実質的な給与が高くなる点を指摘した。高い頻度で出勤を要求する企業は、それなりに高い給与を出さなければ、採用競争で敗れるということだ。
さらに、アルソア(山梨県北杜市小淵沢町)や再春館製薬所(熊本県上益城郡益城町)のように、あえて都心部から離れた土地に本拠地を置く企業に聞くと、「そこにその企業がある意味をきちんと語れる」とも話す。どこに本拠地を置き、どの程度の頻度で出勤を求めるかということに、企業としてのポリシーが求められると改めて強調した。
4つ目の「採用のグローバルメガコンペティションの発生」は、3つ目の課題の延長だ。COVID-19の感染拡大は、日本だけではなく、世界共通の大問題である。従業員がどこに住んでも良いとなれば、海外に住んでいても日本企業に勤められるということになり、日本企業は世界中の企業と人材の採用競争をしなければならなくなる。
「日本には『日本語』というバリアーがある」(山口氏)ため、日本企業が日本人を採用する分には、まだ世界中の企業との競争にはなりにくいが、今後翻訳技術が進化すれば、そのバリアーも問題ではなくなるかもしれない。山口氏がマイクロソフトの関係者に尋ねたところ、「そのような翻訳技術はほぼ実用段階まで来ている」との解答だったというエピソードを付け加えた。