リモートワークで結果を出せる管理職、
出せない管理職

山口周氏。「After COVID-19の社会に向けて、人事が解決すべき7つの課題」山口周氏。「After COVID-19の社会に向けて、人事が解決すべき7つの課題」と題して基調講演を行った

 5つ目の課題は、部下のマネジメントスタイルについて。いちいち細かく管理する「マイクロマネジメント」か、ゴールやビジョンを示して基本的には任せる「ビジョナリーリーダーシップ」か。リモートワークが常態化すると監視ができなくなり、マイクロマネジメントを好む管理職は管理ができなくなるが、特に日本は、マイクロマネジメント型の管理職が多い、と山口氏は指摘する。

 リモートワークが当たり前になると、仕事の意味を語り、モチベーションを引き出せるビジョナリーリーダーシップが求められるともいう。その結果、管理職として成果を上げられる人と上げられない人の二極分化が起こると予測した。

 6つ目の課題「仕事選びの要素も変化」は、日本企業にとっては頭の痛いものとなりそうだ。従業員に、なぜその企業で働いているのかと聞くと、アメリカでは仕事のやりがいや会社のビジョンへの共感といった返答が多いのに対し、日本では職場が好き、一緒に働く人が好き、といった返答が多いという。

 しかし、リモートワークが当たり前になると、職場が好きとか、一緒に働く人が好きという理由は吹っ飛んでしまう。今後の職探しでは、企業が打ち出すビジョン、どのような職業人生を歩ませたいかという職業ビジョン、その企業でどのように成長できるかといった要素が極めて重要になるという。

 最後の課題「学習格差の拡大」は、教育や職務経験の問題だ。リモートワークになると、研修は何とかできたとしても、職務で先輩社員を「見て学ぶ」というOJTができなくなる。「正統的周辺参加」とは組織論の用語で、何も知らない人間に周囲が教え込まずとも、同じ場にいる他者を見て自然に学ぶことを指す言葉だ。リモートワークが当然になると、新入社員だとしても正統的周辺参加ができなくなってしまう。とはいえ、同等の内容を教え込もうとすると相当なコストがかかってしまう。

 山口氏の提案は「新卒一括採用を見直してみてはどうか」というものだ。新卒の教育は他社に任せ、そのコストを中途採用の精度を上げるために使うというのも一つの考え方。さらに「正統的周辺参加に代わる教育手段をどのようにして作るのかが問題になる」と語り、基調講演をまとめた。