企業と個人が互いに成長できる関係づくりについて研究を行うキャリアアセットマネジは、神戸大学大学院経営学研究科で組織論を専攻し、人的資源管理に携わる伊達洋駆氏とともに“エンプロイアビリティ(雇用され得る力)”の実証を伴う開発を行っている。このほど同社と伊達氏は、組織に貢献する人材力の研究を目的に複数企業の人事担当者への取材を実施した。本連載では、この取材結果に基づき、人材確保と養成のための実践的な方法について、伊達氏の考察を展開していく。

 

伊達洋駆 だて・ようく
神戸大学大学院経営学研究科所属。産学連携をコーディネートするリエゾン組織、株式会社ビジネスリサーチラボ取締役

5回にわたって続けてきた連載も、今回が最終回となった。

これまで、経営に貢献する「人材の資源化」について、数多くの企業の人事部を取材してきた。

今回はこれまでのまとめとして、変化する社会環境や事業環境のなかで、人事戦略に継続性を保つためのヒントについて考えてみたい。


 

企業は面接で何を見ているのか

  私が本籍を置くアカデミックな研究機関では、従前より採用のシステム化に関する問題意識は高まっています。しかし、人事、特に採用ということになると、取り扱う情報が、個人のかなりデリケートな部分に触れなければならず、企業と共同での研究や、分析といった実践的な活動につながりにくい状況にあるといえます。

 経営学という研究領域において、それが進まないもう一つの問題として、システム化の対象が「人そのもの」であり、その対象が持つ「揺らぎ」についての理解を深める必要がある点があげられます。例えば、コミュニケーション力という言葉一つを取ってみても、何をもってコミュニケーション力を高いとするのかといった基準は、はっきりしません。面接で語られる言葉の量や、応答の速度、または論理的な説明といったことが、期待するコミュニケーション力を担保するかどうかは誰にもわからないからです。

 実際の人事の現場でも、この「揺らぎ」が採用や評価における問題として認識されています。人事担当者と社員(あるいは学生)双方にある「揺らぎ」によって、評価システムが「直感」に頼らざるを得ないものになっている点です。これを取材した企業の声に照らし合わせてみましょう。