「面接する社員には、人事として特に見てほしい点を伝えますが、彼らの評価が“一緒に働きたいかどうか”という点を重要視してしまうのは仕方がないことだと思います」(NTTデータ 人事部 藤本氏)
「お客様から好かれないと実績が上がらない仕事ですから、漠然とした言い方になりますが、やはり第一印象や雰囲気はとても重要なポイントです。それから、目配りや気配りができるかどうかも大切です」(佐川急便 採用担当 鈴木氏)
すぐに現場になじめるという人材がほしいのであれば、「直感」に任せた評価でも構わないのでしょう。しかし、長期的な視点を持って人材の資源化に取り組むのであれば、何らかのモノサシを生み出し、継続性をつくる必要があります。
もちろん、企業の人事担当者も「直感」の重要性を認めながらも、それに依存することに安穏としているわけではありません。何らかの仕組み化によって、その継続性をつくろうという姿勢が、次のような声からも認められます。
「かつては、面接官が『一緒に働きたい』と感じることに負う部分も多かったのですが、最近は、このような点を見てくださいと、欲しい人物像を明確にして、面接官に伝えています」(TBS 人事部 中山氏)
「面接では面接官が無意識に自分に似た人を評価する傾向があるかもしれません。ただ、その視点だけでは採用が偏ってしまいますので、全体の1割はあえて別の視点で、“尖った人”も採用するようにしています」(凸版印刷 人事部 萩原氏)
ここに見られるのは「直感」に頼らざるを得ないことを知りつつ、その「直感」への依存に問題意識を感じて試行錯誤する人事担当者の姿です。
「直感」の限界や弊害を打破するために、これまで使われてきたのが、適性検査や能力評価など、基準を何らかの言葉にして評価する方法でした。外交性、協調性、情緒安定性などの性質を言葉として標準化し、その言葉に照らし合わせるように評価することで、必要な人材を見極めようとするものです。
しかし、この方法にも限界と弊害があります。採用や育成の基準を言葉で共有しようとすると、そこにやはり「揺らぎ」が横たわっているのです。