日本のスタートアップがグローバルで活躍するための条件とは?

VACAN(バカン)
河野剛進 CEO
Takanobu Kawano

東京工業大学大学院修了(MOT)。 画像解析や金融工学のバックグラウンドを背景に、三菱総合研究所で市場リスク管理やアルゴリズミックトレーディング等の金融領域における研究員として勤めた後、グリーにて事業戦略・経営管理・新規事業立ち上げ、および米国での財務・会計に従事。 その後ベンチャー企業の経営企画室長やシンガポールでの合弁会社の立ち上げ等に従事した後に、バカンを設立。 社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

琴坂 確かに、J-Startupに関しては国内のみならず、国外からも評価が高いですね。ところで、多くの自治体がスタートアップが生まれるようなエコシステムを作ろうとしていますが、こうした取り組みに関してはどう思われますか。

河野 渋谷のStartup Deckのように、自治体や街が動いてハブになってくれると、大企業も集まってきて連携したり、スタートアップ同士も連携する可能性が広がったりするので有り難いですね。私たちのサービスは自分たちだけでは成立しません。人がリアルに集まる場に企業や人が集まって、さまざまなサービスの選択肢の一つとなってこそ、機能するので。

琴坂 イノベーションの一つの源泉は、思いがけない者同士がつながる「新結合」ですから、スタートアップだけで閉じないエコシステムが必要ですよね。クリエーターやアーティスト、地域の伝統産業に従事する人も集まり、その人たちと世界につながるスタートアップが融合していくというようなエコシステムは一つの理想だと思います。

中島 エコシステムができて、スタートアップの周りに、VCやそのメンターなど支援する人たちが多く集まれば、良い支援をされた起業家は成長します。ただ、そこでは支援する側とされる側が対等でなければならない。フェアネスの教育が必要だということです。大企業とスタートアップのオープン・イノベーションでも、スタートアップを単なる下請けみたいに思っていて、当社との事業以外にはそのアイデアは使えませんという契約をさせたりとか、ひどい例もまだまだあります。

スタートアップを取り巻く環境は
大きく変わりつつある

琴坂 シリコンバレーと日本の最も大きな差の一つは、支援サービスの充実かと思います。例えば、シリコンバレーでは、弁護士、会計士、弁理士、またヘッドハンターなどの専門職の人材がそろっており、海外展開に関するノウハウを豊富に蓄積していると感じています。また、投資家や政府機関も、海外展開の困難と可能性を十分に理解していて、計算されたリスクを取ることを応援する器量をお持ちのようです。

中島 まさしく。海外展開では、たとえば監査費用だけでも非常にコストがかかる。そういうものも込みで挑戦しているので、支援する側も新しいものを育てていくということに対して、リスクが大きいとか、どうせ成功しないだろう、という見方では絶対だめなんです。日本企業のスタートアップが小ぢんまりとしているとしたら、育てる側がリスクを取らないからということも大いにあります。

河野 私たちは「絶対にこの課題を解決するんだ」という決死の覚悟でやっていますから、支援する側も私たちを信じて賭けてほしいですよね。単に成長してフィナンシャルリターンが得られる企業に投資をするのではなく、この事業がなかったら社会が成り立たないというくらいのミッションを担う、世界に誇れる企業を長期スパンで育てていく必要があると思います。

中島 厳しい状況の中でも、先鞭をつけてくれた企業があり、金融機関にもこれはやらなくてはいけないんだという信念を持っている人がいる。J-Startupにしても、JETROにしても、そういう情熱が集まり始めている。ESG投資が世界的な潮流になってもいる。そういう意味では10年前とは状況が変わってきたと感じています。

琴坂 そうですね。大きく状況は変わりつつあります。今後が楽しみですね。

左から、JETROスタートアップ支援課・島田英樹課長、慶應義塾大学SFCの琴坂将広准教授、バカンの河野剛進CEO、GMSの中島徳至CEO。

日本貿易振興機構(ジェトロ)イノベーション・知的財産部スタートアップ支援課:世界で活躍するスタートアップ創出のために、政府や関係機関と連携し、スタートアップのグローバル展開を支援しています。世界各地のスタートアップ・エコシステムと直結した展示会への出展支援や、ブートキャンプ等のハンズオン型プログラムの企画・運営、現地アクセラレータ/VCとのメンタリング・マッチング機会等を提供。
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