農林水産ビジネスに関連する知的財産には、後述するように、新品種の育成者権や、栽培方法などのノウハウ、ブランドの商標権や、伝統的産品の名称である地理的表示(GI)、加工機械の技術特許など、さまざまなものがある。複数の知的財産を複合的かつ有機的に活用することを「知財ミックス」というが、アグリビジネスにおいても知財ミックスは重要な戦略となる。
とはいえ農林水産の生産者にとって、どのタイミングで、どのような権利を取得していけば良いのか、的確に判断し行動することは難しい。そのようなときに弁理士が活躍するのだ。
約1万1600人の弁理士を擁する日本弁理士会では今、農林水産ビジネスのサポートに力を入れ、農林水産知財に詳しい弁理士を積極的に育成している。今年1月からは、同会ホームページに特設サイトを開設。相談のきっかけがつかみづらい農林水産事業者のために、専用の無料相談窓口も設けた。
「当会では、海外展開に伴う外国での権利取得のサポートも行っています。日本の農林水産物ブランドの模倣を放置すると、ブランドへの信頼が著しく毀損されてしまいます。海外でのブランド保護や権利行使のためには、その国で権利を取得する必要があり、私たちは海外のネットワークを駆使して、商標権行使を含めてさまざまな対策を行っています。日本の産業競争力を高めるためにも、われわれ弁理士を大いに活用していただきたい」と語る清水会長。
政府は、農林水産物・食品の輸出額を2030年までに5兆円とすることを目標としており、弁理士のさらなる活躍が期待される。