全米リアルター協会 日本大使
横浜に生まれ、20歳でアラスカに留学。アラスカ大学でエスキモー言語学、さらに修士課程でアサバスカン言語学を学ぶ。フェアバンクスの新聞社勤務を経て、1982年から不動産業に従事。キング・カウンティー不動産協会会長などを歴任し、現在は米国リアルター協会の代表として、日本の不動産協会への大使を務めている。シアトルの日本語ポータルサイトJunglecity.comの『プロに聞こう』で、不動産売買に関するコラムを連載中。
渡部 はい。消費者の利便性を高めるために契約書を統一しました。どの不動産業者から買おうと契約書は同じです。消費者は取引の比較検討がしやすく、不動産業者によるごまかしも発生しにくい。標準化により会計事務所のコストも下がるので、カット分を消費者に還元することができます。また、住宅ローンの査定や不動産鑑定にもMLSのデータが使われているので、銀行によってローン審査の結果が違うとか、不動産業者によって売却査定額が違うといった不都合も生じにくくなります。
井端 消費者保護という点で、実に優れたシステムですね。
渡部 米国では、不動産取引はとても身近です。米国ではMLSで中古物件の価格が決まれば、次に売り手は週末にオープンハウスを開く。転勤になったら住宅を買い替える、あるいは子育て中は環境のいい広い家を買い、リタイア後は便利なコンドミニアム(日本でいうマンション)に買い替える、といったことが、ごく普通に行われています。とにかく物件の流通スピードが速いのです。
美しい住宅地を育てる
自主管理運営組織
オウチーノ社長
同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。リクルートを経て、『週刊CHINTAI』、『ZAGAT SURVEY』取締役編集長などを歴任。2003年、ホームアドバイザー(現オウチーノ)を設立。新築・土地専門サイト「新築オウチーノ」、中古専門サイト「中古オウチーノ」、リフォーム業者検索サイト「リフォーム・オウチーノ」、建築家マッチングサイト「建築家オウチーノ」、賃貸専門サイト「キャリルーノ」などを運営。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通刊)などがある。
井端 先般、渡部さんのご案内でシアトルを視察して驚いたのは、どの家にも塀がなくて、各戸の前庭がよく見え、植栽が整えられ……と、住宅地全体が大変美しいことでした。
渡部 そういう住宅地ができるのもルールがあるからです。米国ではコンドミニアムはもちろん、多くの住宅地にルールがあり、同意した上で入居します。日米の違いは、このルールを施行するための管理事務所をつくっているかどうかにあります。
井端 HOA(ホーム・オーナーズ・アソシエーション)という、住宅地の管理運営組織ですね。
渡部 チリひとつない道路も、住宅地の各戸のオーナーが月々の会費を出し合ってHOAを運営し、掃除をする人を雇うから可能になる。HOAのルールは街ごとにさまざまですが、いずれも破ると罰金が科せられます。