コンサルティング力を兼ね備えたエンジニア「VI」が、スマートインダストリーへの変革を担う

コンサル、派遣、育成の三位一体で
スマートインダストリー化を支援

 そうしたデジタル人財不足の問題解決を、アデコグループはどのように支援しているのでしょうか。

 アデコグループのIT、R&D領域のエンジニア派遣、請負およびコンサルティング事業サービスのブランドであるModisおよびModis VSNは、国内で「Tech Consulting」(テック・コンサルティング)、「Tech Talent Service」(テック・タレント・サービス)、「Tech Academy」(テック・アカデミー)という3つの領域でサービスを提供しています。

 ここ10年ほど、当社グループが特に力を入れているのは、お客様のDXやスマートインダストリー化をトータルに支援するテック・コンサルティングです。事業モデルの変革についての戦略立案といった上流から、実際の製品・サービスのデリバリー、そして、必要な人財の採用・育成に至るまで、エンド・トゥ・エンドでサービスを提供しています。

 上流工程はコンサルティングファームが得意とする領域ですが、Modis独自の提供価値は何でしょうか。

当グループは、長年にわたって多数のテック人財を企業に派遣しており、それぞれの人財は、派遣先企業の業務やサービスについて熟知しています。つまり、技術だけでなく企業や業界ごとのドメイン知識にも精通しているのです。

 また、派遣されている企業の文化や、抱えている課題についても日々の業務を通じてよく理解しているので、外部から支援を行うコンサルティングファームよりも、顧客企業のニーズにかなった提案をすることができます。

 さらに、当グループは人財サービスの会社なので、人財採用・育成計画をベースとするコンサルティングを行えるのも強みです。経営のあり方やビジネスモデルを変革するためには、会社の文化そのものを変える必要があります。つまり、「人」の意識や文化からトランスフォーメーションしていかなければなりません。

 人財育成については、さまざまな教育プログラムを用意した「テック・アカデミー」で対応しています。このように、コンサルティング、教育・育成、人財派遣・紹介という三位一体で企業を支援できるのが、当社独自の提供価値だといえます。

バリューチェーン・イノベーターが
顧客企業のDXを支援

 テック・コンサルティングについて、詳しく聞かせてください。企業に派遣するエンジニアが、技術スタッフとして活躍するだけでなく、派遣先のDXの担い手にもなるということでしょうか。

 その通りです。Modis VSNでは、そうした顧客企業のDXや課題解決を支援する「バリューチェーン・イノベーター」(VI)というサービスを提供し、提供できる人財を戦略的に育成しており、社内資格制度も設けています。

 「VIアソシエイト」「VIプロフェッショナル」「VIエキスパート」という3つのレベルの資格を用意しており、約5000人いる派遣エンジニアのうち、6割以上がいずれかの資格を取得しています。

 有資格者は、DXに欠かせないロジカルシンキングやデザインシンキングのメソッドも習得しているので、先端技術に精通したエンジニアであるだけでなく、コンサルティングスキルやドメイン知識も兼ね備えた人財として、顧客企業の変革を支援することができます。

 VIが顧客企業と一緒になって変革に取り組みながら、顧客企業におけるDX人財の採用や育成も支援するわけですね。

 単に採用や育成を支援するだけではありません。DXを進めていくうえでは、その担い手となる人財をどのように配置するのかという「人財ポートフォリオ」の策定が欠かせません。

 多くの企業の場合、いまいる人財だけでポートフォリオを形成しようとしがちですが、事業戦略を遂行するためには、どの部門や機能にどんな人財が必要かという観点でポートフォリオをつくり、人財が足りなければ獲得、または育成しなければなりません。

 そうした事業戦略に基づく人財戦略づくりや、採用・育成を支援できるのが、他のコンサルティングファームと大きく異なる点です。

 社内人財の育成において、ポイントとなる点は何でしょうか。

 会社がこの先、どの方向に進むのか、そのためにどんな人財を求めているのか、ということを明確にしたうえで、多様な選択肢が用意されたキャリアマップを提示するのが有効だと思います。

 たとえば、Modis VSNでは、いま国内で注目が高まっているジョブ型の雇用制度を15年前に導入しており、先例のない中で独自のキャリアマップをつくり上げてきました。

 横軸を会社が求めている職種、縦軸をキャリアレベルとし、いま自分がどの位置にいるのか、将来はどこを目指したいのかを「見える化」できるようにしたのです。

 同じ職種のままキャリアアップしたいという人財もいるでしょうし、別の職種で上を目指したいという“斜め上”のキャリアを目指す人もいるかもしれません。いずれにしても、進める道を明確にして、アップスキリングやリスキリングの動機付けを高めるわけです。

 Modis VSNのキャリアマップが特徴的なのは、それぞれのポジションごとの「市場価値」を示している点です。

 たとえば、長年インフラエンジニアとしてのキャリアを積んできたけれど、データサイエンティストのほうが市場価値は高いとわかれば、そこを目指す人財が増えるかもしれません。今後の事業戦略に欠かせない職種に高い価値をつければ、おのずと理想の人財ポートフォリオに近付けることができます。

 ちなみに、Modis VSNのジョブディスクリプション(職務記述書)におけるデータサイエンティストの要件を満たすには、最低5カ月は日常業務を離れてデータサイエンスの教育・トレーニングを受ける必要があります。デジタル人財の育成にはそれだけの投資も必要なのです。

 また、HR領域では「7:2:1の法則」と言っていますが、新たなスキルを獲得するには、研修などの学びが1割、他者からのコーチングやアドバイスが2割、そして7割が経験によって得ることができるといわれています。たとえば、座学の教育・トレーニングでデータサイエンスの知識を身につけたとしても、実際のビジネスでそれを活用する経験を積まなくては本当のスキルとして身につけることはできません。

 ここが難しいところで、一般の企業で働く人がデータサイエンスの知識を学んだとしても、社内でそれを活かせるポジションにすぐ就けるかというと、現実には簡単ではありません。一方、当社グループは多数の顧客企業の現場でデータサイエンスの知識を活かせる仕事がありますので、すぐに経験を積むことができます。つまり、デジタル人財の育成において非常に優位な環境にあると言うことができます。

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