半導体の製造工程で採用
少量多品種の装置に強み
同社が主力としている市場は、技術革新が著しい半導体市場。では半導体の製造工程のどこで、同社の製品が使われているのだろうか。
カーボン製品は、インゴット※の引き上げ装置の部品として使われている。インゴットの引き上げとは、半導体のベースとなるシリコンの単結晶(結晶軸の向きが同一のもの)を作る工程のこと。シリコンは抵抗加熱方式で加熱されるが、三幸はその装置で使われるヒーターや坩堝などのカーボン製品を提供している。セラミックス製品は、酸化・拡散・CVD・イオン注入の工程で、酸化拡散装置やイオン注入装置の部品として使われている。また、酸化物育成の分野では、主に高周波加熱装置が使われており、そこで三幸のセラミックス(耐火物)が採用されているのだ。
酸化物引き上げ用などの一般耐火物の他、半導体製造装置用セラミックスなど
そして精密機械製品は、ウエハーの酸化の工程で、ウエハー表面処理装置の一部のユニット品として使われている。ウエハーの酸化とは、ウエハー上に絶縁薄膜を形成するためにウエハー表面を酸化する工程のこと。高温の拡散炉の中でウエハーを酸化性雰囲気にさらし、表面に酸化膜を成長させるのだが、三幸はその工程で使われる熱処理ユニットを製造している。
精密機械製品に関しては、こうした半導体製造向けだけでなく、顧客のニーズに応じてさまざまな用途の装置を製造している。主なターゲットは、大学の研究室や企業の研究開発部門だ。
真空関連装置や加熱関連装置など、顧客のニーズに応じた装置を設計、製造する
「そうした現場では、小規模の装置で研究をスタートします。世の中にないものを作る研究なので、既存の装置では対応できません。既存の装置を改造する必要があるのですが、通常は高額な改造費用と長い納期を要求されます。当社は小規模な会社なので、お客さまのニーズに柔軟に対応して専用の装置を設計し、細かな修正を施しながら、迅速に納品することができます。いわば少量多品種の装置の製造が得意で、それを強みとしているのです」(奥野社長)
同社は装置と部品の両方を扱っているため、装置作りの過程で整合性も取りやすい。研究部門は機密事項も多いが、研究のノウハウを守るクローズドな環境もある。装置ありきではなく、研究者に寄り添い一緒になって精密機械を作っていく姿勢が評価されているのだ。