モノづくりの川上にある
「素材」分野へも進出
富山工場にはクリーンルーム(クラス1000)が完備されており、半導体関連・医療品関連などの製品まで対応が可能
こうした精密機械製品の製造に加えて、今力を入れているのが「素材」の分野だ。具体的には、放射線を遮断する素材の開発に取り組んでいる。放射線の遮蔽体の中でも特に中性子の遮蔽に特化した遮蔽体で、福島第一原発の燃料デブリの除去作業に使われるものだ。
「廃炉を安全に進めるためには、原子炉から燃料が溶け落ちた“燃料デブリ”を取り出して分析する必要がありますが、そこでは中性子を厳重に遮蔽しなければなりません。私たちは、これまで半導体分野で蓄積してきた装置や素材の開発力を生かし、中性子を遮蔽して中身を確認できる“透明な”遮蔽体の開発に取り組んでいます」(奥野社長)
将来的な用途としては中性子の遮蔽だけでなく、さまざまな放射線を遮蔽する透明遮蔽材を製造することで、医療分野や化学分野への展開も視野に入れている。
さらに同社では新しい「素材」の可能性にチャレンジするため、東北大学、名古屋大学の研究室とコラボレーションし、ベンチャー企業を立ち上げている(次ページ参照)。
「当社は商社から始まり、モノづくりに進化してきましたが、外的環境の影響を受ける川下のポジションのままでは経営の安定化は望めません。そこで、ニッチでありながらモノづくりの川上にある“素材”分野への展開が必要だと考え、既存の市場にはない製品を作り上げようと挑戦しているのです」(奥野社長)