デジタル人財の不足に悩む
顧客企業の社内育成も支援
Modis VSNでは、AIやIoTを活用したスマートインダストリーが今後グローバルに発展することを前提に、それに対応できる人財の育成に注力していると聞いています。
当社は、スマートインダストリーの中でも、コグニティブ(認識)テクノロジー、DX、クラウド&インフラ、スマートエコシステム、インダストリー4.0の5つの最先端技術にフォーカスしており、これらの技術を身につけた人財の輩出によって、自動車・運輸、環境エネルギー、ソフトウェア・インターネット通信、金融サービス、製造業の5つのグローバル産業の変革を支援することを目指しています。
社内教育でも、この方針に沿ったスマートインダストリー領域のトレーニングを2020年度から開始しました。約4800人のエンジニア人財のうち、少なくとも1割が2021年度中にスマートインダストリー教育を修了することを目標として定めています。
AIやIoTなどの知識を持った高度人財は、いまでも不足しているといわれていますが、今後、スマートインダストリー化が急速に進むと、ますます不足感が高まるのではないでしょうか。
おっしゃる通り、世界のスマートインダストリーの需要は2020年までの5年間、年平均40%以上成長しており、今後も急成長が見込まれます。一方で、経済産業省の試算によると日本のデジタル人財はいまのままだと2030年に最大で約79万人不足するといわれており、スマートインダストリー化のために必要なドメイン知識を兼ね備えた人財となると、圧倒的な不足が見込まれます。
執行役員 イノベーション&キャリア開発本部 本部長
前田拓宏
Takuhiro Maeda
特に、大企業に比べて採用面で不利な中堅・中小企業にとって、スマートインダストリーに対応できる人財の獲得は、大きな経営課題だといえます。
そうした社会課題の解決に貢献するために、当社としてはスマートインダストリー化に対応できるデジタル人財を一人でも多く育成したいと考えています。この方針は、2021年度からスタートした当社の5カ年中期経営計画にも明確に掲げており、これまで以上に人財育成を強化していきます。
Modis VSNのTech Academyは、自社の人財だけでなく、顧客企業の社内人財育成も支援していますね。具体的には、どのような支援を行っていますか。
たとえば、弊社のお取引企業であるデンソー様へは、製品の設計を担ってきたエンジニアの人たちが、ソフトウェアエンジニアとして社内で職種転換をする際に必要となるスキルを習得する教育プログラムを提供しています。また、ある通信キャリアのお客様に対しては、営業支援を担当してきた人財をSE(システムエンジニア)としてリスキリングする支援サービスを提供しました。
このように、顧客企業におけるアップスキリングやリスキリングをサポートするケースが非常に多くなっています。
日本のデジタル人財不足は、多くの企業が長年、自社のシステム開発を外部のシステムインテグレーターやコンサルティング会社などに委託してきたことも大きく影響しています。従来のIT化は、業務の効率化や生産性向上が主な目的だったので、外部に委託してもあまり問題はありませんでしたが、企業としての競争優位を決めるDX推進やスマートインダストリー化は、外部に丸投げするわけにはいきません。
そのため、社内にいる人財をデジタル人財に育て上げようと、リスキリングに取り組む企業が増えているのです。当社はそうした社会的ニーズの高まりに対応して、VIのサービスで培った人財育成のノウハウやプログラムをお客様にも積極的に提供していきたいと考えています。
顧客企業からの支援要請が増えているのは、どのようなプログラムでしょうか。
パブリッククラウドや、AI、IoT、データサイエンス、サイバーセキュリティなどに関する教育を行ってほしいというご要望が多いですね。
アデコグループのグローバルな技術系人財サービスのブランドである「Modis」は、日本を含む世界7カ国でテック・アカデミーを展開していますが、パブリッククラウドの「Azure」(アジュール)を提供するマイクロソフトとトレーニングパートナー契約を結んでいます。
また、サイバーセキュリティについては、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)に加盟し、同協会が提供する受講者のセキュリティスキルを可視化できるツールなどをともに開発・活用しながら、効果的な教育を実践しています。
このように、さまざまな企業や団体とコラボレーションしながら、より有効な教育プログラムを提供できるのも当社の特徴だといえます。
データサイエンティストも、AIの普及とともに人財不足が顕著になっている職種ですが、Modis VSNではどのように育成を図っていますか。
当社では、2年ほど前からデータサイエンティストの育成に力を入れてきました。
具体的には、若手の優秀な社員を採用して半年間、集中的にトレーニングを施しているほか、すでに顧客企業の現場に出ている社員を一時的に呼び戻し、3カ月間トレーニングするという2つの方法で育成を図っています。
後者については、すでに現場で蓄えたドメイン知識を持っているので、それにデータサイエンスの知識を組み合わせることで、より実践的なデータ分析やソリューション提案ができる即戦略人財として、顧客企業から高い評価をいただいています。お客様のニーズに合わせて、教育プログラムを共同で作成するケースもあります。