解法パターンが通用しない入試問題

――塾や予備校で解法のパターンを教わり、それを使って設問を解く、というこれまでのあり方とはだいぶ変わった感じを受けます。

石田 実はセンター試験の問題も、中身を詳しく見ると、単にパターンを覚えただけでは対処しにくい工夫した非常に良くできた問題だったのです。それでも、パターンを覚えて、ひたすらゴリゴリ計算する対応の仕方でもある程度の点数は取れてしまっていた。その結果、入試に対応するにはそういうパターンを覚えて解く、というスタイルができてしまった。

 ですが、このような「パターンを覚えて…」という方法では、実は難関大の個別試験には対応できません。私たちはそのような差異を感じ取っているので、受験生に対してもう一つ上の視点を持たせるように指導しています。

 自分の大学入試のときは、処理能力や知識が問われていたように記憶している保護者の方が多いと思うのですが、少なくとも近年の入試問題は違います。具体的な事象から法則を見つけ、その取り出した法則を使って、次の具体的な問題を解決していく、といった場面が多く設定されています。こうした傾向と共通テストの方向性は一致しています。単なる処理能力から、新しい課題を解決するための思考能力を問うように変化しているわけです。

――“過去問”が通用しづらいように思えます。教える先生方は大変ですね。

石田 その通りです。今回の共通テストに対する現場の先生方の反応では、「こんな問題は教科書や問題集に載っていない」という声がありました。実はこの4月に、新学習指導要領に対応した新しい高校教科書が公開されました。その中身を見てみると、確かに新しい数学観に一定の対応をしている教科書もある一方で、従来の方針とそれほど変わらないものもありました。なにぶん過去問の数も限られていますから。

 したがって、現場が対応するには、自分たちで問題を作ったりしなければならないように思います。実際、私もこの傾向に対応するため、中1からの教材を毎週新たに作成していますが、本当に大変です(笑)。生徒指導や学校行事、部活、保護者への対応などさまざまな仕事の負担が増えている上に、従来通りのやり方ではいけないとなると、本当に現場は大変だと思います。

 しかしながら、そのような状況下でも工夫されている先生方はいらっしゃいます。実際、中学の入試問題を見ると、これまで挙げてきたような算数・数学で求められる力を反映させた問題が増えてきているように思います。以前より難関大に進学実績を出している中高一貫校は、将来大学入試で求められる資質・能力を念頭において中学入試問題を作成している面がありました。将来の大学入試に向けてどのような力を持った子を欲しいのか、が入試問題にも反映されているのです。

――では、実際の中学入試では、どのような問題として表れているのかを次に見ていきたいと思います。