「持続可能なサーキュラー・エコノミー」の実現に不可欠なものとは
第1部では「プラスチック・サーキュラー・エコノミーによる持続可能なビジネスの創造」として、「サーキュラー・エコノミー」の視点からどのように持続可能なビジネスを創出していけばよいのか、専門家と参画企業による深掘りが行われた。
(WWFジャパン提供)
水野大二郎氏からは、サーキュラー・エコノミーの将来像は「直線型から循環型へ」の単なる移行ではなく、「どうやって物質の使用量を削減するのか」、究極的には「モノを作らずにどのようにビジネスを回していけるのか」という「閉じた輪」のデザインへの転換が必要だとする基調講演を踏まえ、企業がすぐに取り組めるような「漸進型」と、自治体も含め多数の利害関係者のネットワークで取り組まなければ前に進まず、痛みを伴う「破壊型」という二つのパターンがあると指摘。
特に破壊型のサーキュラー・エコノミーの実現に向け、それを担える人材が圧倒的に不足しているという課題を挙げた。サーキュラー・エコノミーという進行中の新しい課題に対し、企業のサステナビリティを推進する部門で、専門的知識を有し、ビジネスモデルや法制度、新しい技術の可能性を理解できている人材が圧倒的に不足していると述べ、その育成が急務であると強調した。
京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。2008年Royal College of Art 博士課程後期修了、芸術博士。京都大学デザインスクール特任講師、慶應義塾大学環境情報学部准教授を経て現職。著書多数。(WWFジャパン提供)
一方、枝廣淳子氏からは「見える化」の重要性が語られた。目指すべきサーキュラー・エコノミーの姿に対し、自社がどこまで達成できているのか、どこが強くてどこに弱点があるのか、現状をデータで示せなければ、何をどこまで転換すればいいかが明確にならないとの指摘だ。
さらに枝廣氏は、これからは企業単体でなく多数の利害関係者と連携した大きな改革が求められているのに対し、日本の企業は広いステークホルダーと一緒に取り組んできた経験が少ないことを指摘。そして、消費者に受け入れられるビジネスの創出のために、設計段階から消費者を巻き込んで、小さな取り組みを地域で試みていくことの必要性を強調した。
また法的枠組みの改善などを含め、サーキュラー・エコノミーへの転換を実現するために、他の企業との協業を、消費者との連携や共創のデザイン・創造にまで広げていくことが求められており、企業担当者がそのためのプロセスや作法を身に付けていくことが大事だと述べた。
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