消費者を巻き込むために必要なこと
その後、包装を撤廃・削減するために各社が苦労していることは何か、消費者に対してどのようにアプローチして共創を目指しているのか、それぞれが現状を説明した。
マーケティングの一環としてヒアリングは行っているが、なかなか消費者の本音が捉えられないという話を披露したのはユニ・チャームの上田氏だ。ヒアリングではパッケージを削減した商品への評価が高くても、実際に購入率が伴わないなどの問題もあり、これからは、消費者の購買行動をどうやって持続可能な方向に促していけるのかが課題だと語る。
ネスレ日本の嘉納氏は、環境に配慮した価値観を消費者との対話を通して一緒に育てていくことを目指し、地球のことや、プラスチック問題について親子で学べるプログラムを実施していると紹介。さらに今後、「商品設計から消費者を巻き込んでいけるような段階へと進めていきたい」との抱負を示した。
「消費者の選択肢が圧倒的に不足している」という課題
企業、消費者とも活動を共にし、両者の立場を知る三沢氏は、プラスチック削減に関しても、消費者の選択肢が圧倒的に不足していることを指摘した。
プラスチックを減らそうとしても、エコバッグやマイボトルを使う以外に何をすればよいのか、それ以上できることがないと立ち止まってしまう消費者は多い。三沢氏は、環境に配慮した製品が利益になりにくかったというこれまでの事情にも理解を示しつつ、増大するサステナブルな消費者ニーズに対応すべく、まずはパイロット版からでも、消費者との共創の事例を立ち上げてみることが重要だと提言した。
実際に試行錯誤しながら取り組みを進めることで、消費者に選んでもらえるサービスを探っていけるというメリットもあるので、ぜひ行動に移してほしいと訴えた。さらに国には、そうした取り組みを支援する枠組みを作ってほしいと要望した。
環境省の平尾氏は、国民からの声にはさまざまなものがあることから、企業同様、行政の立場としても、サステナビリティ推進型に政策転換することには迷いがある、との心情を吐露。そんな場面で、消費者やNGOからの声は、環境に配慮した政策を進めるために確実に後押しになるのだとの見解を示した。そして、今後も積極的に消費者やNGOの意見を反映することで、環境配慮型の政策の推進に努めたいと語った。
第二部のディスカッションも、その場でグラフィックレコーディングされた(下記写真)。問題点、意見などが可視化され、盛況のうちにイベントが終了した。
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「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025 みらいダイアログ」概要
◆第1部「プラスチック・サーキュラー・エコノミーによる持続可能なビジネスの創造」
プラスチックの大量生産に基づかない持続可能な「サーキュラー・エコノミー」によるビジネスの創出をディスカッション
◆第2部「ユース×企業×国 本音で語るプラスチックの持続可能でサーキュラーな未来」
消費者やユースの「持続可能なプラスチック・サーキュラー・エコノミー」転換への期待を提示、企業や政府と共創を議論
◆イベント登壇者
- 【主催】WWFジャパン 三沢行弘氏(プラスチック政策マネージャー)
- 【ファシリテーター】大学院大学至善館教授 枝廣淳子氏
- 【ゲスト】京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授 水野大二郎氏
- 【行政】環境省 平尾禎秀氏(環境省環境再生・資源循環局総務課 リサイクル推進室 兼 循環型社会推進室長)、消費者庁 吉村 紀一郎氏(消費者教育推進課長・来賓)
- 【企業】キリンホールディングス 別所 孝彦氏(CSV戦略部 主務)、日本航空 張叶氏(ESG推進)、日本コカ·コーラ 飯田(眞利子)征樹氏(広報・渉外&サスティナビリティー推進本部 サスティナビリティー推進部 部長)、ネスレ日本 嘉納 未來氏(執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長)、ユニ・チャーム 上田健次氏(執行役員ESG本部長)
- 【ユース】慶應義塾大学 蟹江憲史研究会 落合航一郎氏、田中文也氏
「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」参画企業10社
キリンホールディングス、サントリーホールディングス、資生堂、日本航空、日本コカ・コーラ、日本水産、ネスレ日本、ユニ・チャーム、ユニリーバ・ジャパン、ライオン
後援
環境省、消費者庁
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