「JR東経済圏」拡大の要で“惨敗”
会員獲得の進捗率が4割未満
JR東は2018年7月に発表した経営ビジョン「変革2027」で、非鉄道事業を次世代の成長エンジンに育てると掲げている。18年にグループ全体の営業収益の3割にあたる非鉄道事業を、経営ビジョン最終年である26年に4割に引き上げる計画だ。実額にして3000億円の上乗せが必要になる。
そして、非鉄道事業の中心に据えるのが、JRE POINTである。JRE POINTの会員を拡大させることで、「経済圏」を構築するのが狙いだった。
ポテンシャルは大きい。JR東によると22年3月末時点で、カードタイプのスイカの発行枚数は延べ8964万枚、スマホで使う「モバイルスイカ」の発行枚数は延べ1662万枚に達する。これらは、ポイント事業が潜在的なユーザーを多く抱えていることを意味する。
経営ビジョンには、JRE POINT会員数の拡大計画も盛り込まれている。それによると、会員数は25年度には2500万人まで増やすとされている。
しかし、足元の会員獲得は計画に大きく見劣りする状況だ。前述した通り、22年11月末時点での会員数は1332万人。残り3年で現在の2倍近くに会員を増やさなければならない。しかも、22年度の8カ月間で新たに獲得した会員は73万人。JRE POINT事業の担当者は「もっとギアを上げなければならない」と話すが、このペースでは目標の達成は不可能だ。
会員獲得が計画を下回っているのは、理由がある。それが加盟店の不足だ。
ポイント事業の“実力”を見る上で、一つの参考になるのがポイント利用先である加盟店舗数だ。加盟店が多ければ多いほど利便性が高まり、会員獲得の推進力にもなるからだ。
現在、JRE POINTの利用可能店舗(自動販売機を含む)は、約5万カ所。これに対し、ポイント事業の2強ははるかに先をいっている。
例えば、楽天グループの「楽天ポイント」は600万カ所以上(22年10月時点)、NTTドコモの「dポイント」は430万カ所以上(22年9月時点)に上る。
JR東はJRE POINTを楽天ポイントやdポイントのように「共通ポイント」化せずに独自路線を採るとはいえ、加盟店数の差は歴然としている。共通ポイント大手のある幹部は「加盟店を増やすと自社で付与したポイントが外部に流出するというデメリットはある。だが、それを乗り越えないと会員を増やすのは難しい」と指摘する。
加盟店数の差を生み出しているのは、実働部隊の差でもある。これまでNTTドコモは、加盟店開拓の体制を拡充し専門人材を確保。徹底した営業活動で加盟店を増やした結果、会員数は15年12月にサービスを開始してから7年で、9000万人を突破した。
一方で、JR東の加盟店は駅ビル内の店舗などにとどまっている。前出の担当者によると、現在は加盟店開拓はしておらず、複数の駅員が各駅での現場業務をこなしながら、駅の利用者らに“片手間”でJRE POINTの周知活動をかけているのが現状だという。ポイント2強のように加盟店数を背景にした会員獲得は期待できないのが現状だ。
JR東が楽天銀行と提携してネット銀行に参入したのは、独力から楽天の基盤を活用して会員獲得をするという方向にかじを切ったものともいえる。
ただし、JRE BANKをただ設立するだけでは、顧客はサービスに魅力を感じることはないだろう。いくらJRE BANKを設けたとしても、最終的には顧客の利便性をより高める徹底した営業活動が求められるのだ。
しかも、利便性にも課題はある。JRE BANK口座を開設しても、あらためてJRE POINT会員に登録しなければならない。すでに楽天銀行の口座を持つ人も追加でJRE BANKの口座を開設できるが、よほどのメリットがなければ、わざわざもう一つ口座を開くインセンティブは働きにくい。
あまり苦労しなくても客を獲得できる鉄道事業は、「待ち」のビジネスだったといえるだろう。だが、正反対ともいえる非鉄道事業を育てるには、「攻め」の体質に変えなければならない。JR東が目指すスイカ経済圏の道のりは、まだまだ険しい。



