佐藤 授業ではどのようなテーマで議論しましたか。

カザダスス=マサネル 学生には吉田直樹社長の視点から今後のドン・キホーテの戦略について議論してもらいました。

 日本最大手のディスカウントストア、ドン・キホーテは、「店舗への権限委譲」「独創的な売り場づくり」「深夜営業」などを実施し、他の小売企業とは違ったビジネスモデルで成功してきた企業です。

 ところが近年、オンラインショッピングの利便性に慣れてしまった顧客は、これまでのように実店舗に長く滞在しなくなってしまい、結果、同社の国内店舗の売り上げは減少傾向にありました。こうした中、ドン・キホーテは自らの強みを生かしつつ、どのようにビジネスモデルを変えていけばよいのか、というのが授業の主題です。

 具体的には次の3つのテーマで議論しました。

 一つ目は、「既存の成功戦略の変革方法」についてです。

 成功している戦略は、成功しているがゆえに変えるのが難しいと言われています。ドン・キホーテの戦略は日本市場を主眼として立案されたものですから、このビジネスモデルをそっくりそのまま海外(東アジア以外の地域)の店舗で展開してもうまくいかないでしょう。ではこの課題をどう解決していけばよいのか。

 またこのビジネスモデルは一貫した内部組織に支えられているために、オンラインショッピングの台頭など、市場の急速な変化に柔軟に対応するのも難しいという課題もあります。その中で、どのようにビジネスモデルを変革させていくのがよいのか。

 二つ目は、「eコマースの台頭」についてです。オンラインショッピングの普及はドン・キホーテのビジネスにとって脅威とみるべきなのか、あるいは、新たな機会とみるべきなのか。ドン・キホーテが本格的にオンラインショッピング事業を展開した場合、顧客価値(顧客が製品やサービスを購入する際に期待する利益や満足度)とドン・キホーテが実際に提供する価値の間に、どれほどのギャップを生むのか。

 三つ目は「既存の強みの生かし方」についてです。親会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の店舗ネットワーク、商品の専門知識、顧客セグメントの理解といった戦略的資産を、今後、どのように生かしていくのか。実は企業戦略を転換する際に重要なのは、いかに強みを生かしつつ、新たな競争優位性を確立していくかを考えることなのです。

 いずれのテーマについても学生は熱心に発言し、とても白熱した授業となりました。

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強みである「権限委譲」は課題ももたらす

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