とらやの羊羹200年以上の歴史がある小倉羊羹『夜の梅』 画像提供:株式会社 虎屋

「ファミリーオフィス」研究の第一人者であるハーバードビジネススクールのローレン・コーエン教授は、世界的にファミリーオフィスの影響力が強まっていると指摘する。そんな中、コーエン教授は今年、日本の和菓子メーカー「虎屋」を題材にした教材を出版した。老舗和菓子屋に注目した理由とは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

ファイナンスの専門家が
「老舗和菓子屋」に注目した理由

佐藤智恵 コーエン教授は2022年2月、日本を代表する和菓子メーカー、虎屋の事例を取り上げた教材『Toraya』を出版されました。コーエン教授の専門はファイナンスですが、なぜ虎屋に興味を持ったのですか。

ローレン・コーエン それは良い質問ですね。確かに、ファイナンスの教授が日本の和菓子メーカーの虎屋に興味を持つというのは不思議に思われますよね。

 私が最初に虎屋に興味を持ったきっかけは、「ファミリーオフィス」の研究をする中で虎屋に関する記事を見つけたことです。

 ファミリーオフィスとは、超富裕層の資産管理や運用を行う専門組織のこと。超富裕層が一族の資産を守り、増やし、そして継承していくことを目的に専属のファンドマネジャー、弁護士、会計士などを雇って自ら設立します(注:ビル・ゲイツ氏が設立したカスケード・インベストメント、ジェフ・ベゾス氏が設立したベゾス・エクスペディションズなどが特に有名)。