アラビア語とヘブライ語は言語的に近い
旧約聖書でもユダヤ人とアラブ人は「兄弟」
言語的に見ると、アラビア語と、多くのユダヤ教徒の母語であるヘブライ語は、同じセム語族に属する。だから似た単語も多い。例えばアラビア語で「家」は「bayt」、ヘブライ語でも「bayit」である。筆者はアラビア語を解するが、ヘブライ語を聞いているとしばしば、推測できることもある。両者は、兄弟言語であることを実感する。
同じ語族に属するということは、枝分かれを繰り返した人類史において、両者には共通の祖先がいたということだ。
旧約聖書では、アブラハムの子供にはイサクとイシュマエルが含まれており、イサクはユダヤ人の祖先とされ、イシュマエルはアラブ人の祖先とされている。すなわち両者は共通の祖先を持ち、ある時点から分離したとされている。このように、ユダヤ教徒とアラブ人が同じ語族に属することと、旧約聖書の記述は符合するのだ。
ユダヤ教徒への差別や偏見
シオニズムが潮目を変えた
ハマス・イスラエル紛争の勃発後、筆者は何人かのイスラム教徒とディスカッションの機会を持ったのだが、彼らはおしなべて、こうした見解を持っていた。
「イスラム教徒とユダヤ教徒は、ずっと共存してきた。その潮目が変わるのは、シオニズムだったのです」
シオニズム(シオン運動)とは、ユダヤ人の国家を建設し、維持することを主張する政治的・文化的運動および思想のことだ。1894年にフランスで起きたドレフュス事件(ユダヤ系であるフランス軍大尉ドレフェスがスパイ容疑の冤罪をかけられた)は、ユダヤ教徒への根強い差別や偏見を明らかにした。この事件を契機に、2000年にわたりディアスポラ(離散)していたユダヤ人が、聖書にあるカナンの地、約束の地であるパレスチナに帰還するシオニズムが始まった。現在に至るパレスチナ領土問題の直接の端緒である。
その当初は、パレスチナはオスマン帝国領だった。ユダヤ教徒の受け入れを否定しないオスマン帝国内にユダヤ教徒が移住して、パレスチナの地にユダヤ教徒の人口が増えていったのだ。第1次大
と、ここまでであれば、イスラム教徒の国の中に、ユダヤ教徒が少数宗教として存在することは十分可能だっただろう。



