大学が心の拠りどころとなるのは、現役の学生たちも同様だ。グローバル・メディア・スタディーズ学部でグローバル企業の経営戦略を教える各務洋子学長は、学生たちが駒澤大学を起点に留学などで海外に出て、別人のように成長する姿を幾度も目にしているという。
「駒澤大学は曹洞宗の教育機関として発足し、その曹洞宗の教えを日本に伝えた道元禅師は、鎌倉時代に命を懸けて中国に渡った、今でいえば不屈のチャレンジ精神の持ち主ではなかったかと想像します。今の時代も一歩踏み出して、自分の殻を破る勇気が必要だと思います。日本人としてのアイデンティティを持ちながらグローバルな世界を探索する。結果的にそれが自信につながると思うのです」
コネクタメーカーのヒロセ電機は現在、海外販売比率が75%を超えるグローバル企業である。同社の技術力とクオリティーは世界で高く評価され、モビリティ(電気自動車)市場やコンシューマ、産機・インフラ市場をはじめ、さまざまな産業分野で欠かせない存在となっている。
「マーケット自体がグローバルになったので、当社もグローバルで勝負せざるを得なくなったのです。では世界市場で勝負するには何が必要なのか。答えは非常にシンプルで、自分たちの強みを生かすということに尽きます」と石井社長は断言する。
同社が強みとしているものの一つはチーム力。日本発という概念にとらわれず、多様な人材が集う、緊密に連携されたチームが生み出す製品に、圧倒的な自信を持っている。
各務学長もその理念に同意する。「かつて私は、国々の文化の違いが製品の技術革新に関する意思決定に影響するのか、という論文を書いたことがありますが、結論をいえば文化の違いはほぼ関係ありませんでした。ものづくりにおいては、日本企業であろうが欧米企業であろうが、謙虚さやトップを目指す強い意志が必要で、チームで共通の目標を持つことが大事なのだと思います」。