まず、このほど判明したアクセンチュア日本法人の23年8月期決算では、同社の好調ぶりが改めて浮き彫りとなった。売上高は6458億円(前年比16%増)、営業利益は950億円(同15%増)といずれも過去最高を更新した。売上高は19年8月期(3291億円)から4年でほぼ倍増した。
日本のコンサル業界は「一部のファームの不調が報道されているが、基本的に事業は好調で、人手が足りていないというファームの方が多い」(コンサル転職支援などを手掛けるコンコードエグゼクティブグループ・渡辺秀和CEO)とされる。
成長に伴い肥大化を続け、アクセンチュアは日本法人だけで2万3000人近くの人員規模(23年12月時点)を誇るが、先述の通り好調な業績が持続。それに伴い積極採用を継続中なのだ。
次に、アクセンチュアが強化しているリファラル採用について見ていこう。前ページの冒頭で紹介した「管理職候補者向けリワード8倍キャンペーン」とは、全社員に割り振られるマネジメントレベル(ML)が7より上の職位(マネジャー以上)の採用強化を目的としたものだ。
注目となる紹介した候補者の採用が決まった場合の報酬(インセンティブ)は、通常は40万円。だが、キャンペーンでその額は8倍の320万円に跳ね上がった。キャンペーンは23年9月にスタートしており、24年5月まで続ける予定だという。
キャンペーンの対象は、コンサルティングを主導する「S&C(ストラテジー&コンサルティング)」、ITシステムの実装から保守運用までを行う「テクノロジー」、顧客体験向上などを担う「ソング」、業務アウトソーシングや業務自動化を推進する「オペレーションズ」、製造・物流の自動化を手掛ける「インダストリーX」といった主要部門全てとなる。いかに同社が人材を欲しているかが分かるだろう。
一方、報酬の支給要件には、いくつかその対象外となり得る条件がある。それは新卒者や、職歴が紹介日時点で6カ月未満の候補者を紹介した場合の他、過去1年以内にアクセンチュアに応募したが不採用となった候補者を紹介した場合である。同社で契約社員、アルバイトあるいは派遣社員として勤務中の候補者を紹介した場合なども対象外となる。つまり、キャンペーンの名前に冠されたように「管理職候補者」が対象なのだ。
ではなぜ、アクセンチュア日本法人は管理職採用をリファラルに頼るのか。実は、関係者によると、アクセンチュアは社員に向けて「管理職以上でオファーを出した候補者は、管理職以上のみなさんからご紹介いただいた方である場合が多い」との趣旨の下で呼びかけを行っている。
つまり、管理職以上の社員から紹介された候補者に対してオファーを出すケースが多く、リファラルの方が“効率”がいいということだ。
しかも、報酬が8倍になっているといっても、その金額は採用1人当たり320万円。ヘッドハンターを活用した場合は通常、業者側に入社する人員の年収の3割ほどを手数料として支払うケースが多く、給与水準的に管理職以上となれば、ほぼ間違いなく320万円を超えることになる。アクセンチュアからすると、リファラル採用強化はコスト面でも利点があるのだ。
さらに、事情に詳しい別の関係者によれば、同社日本法人では「新卒の人気が高まる中で、人員構成的に若手偏重では案件の受注につながらないこともあり、特にマネジャーの採用を強化しようとしている」という。実際、アクセンチュアに限らず、コンサル大手はここ数年かつてない規模で新卒採用を続けてきた一方、各案件で主導的な役割や育成を担うマネジャー層が不足しがちなのだ。
そして、アクセンチュアのリファラル採用の強化とデロイトの業績悪化が重なっていることに関しては、同関係者は推測であるとしつつも、「このタイミングで採用を積極化する動機の一つになっているのは間違いないのでは」と指摘する。競合のデロイトにも優秀なマネジャーなどの管理職が多く、敵失に乗じて同業からの採用を加速させたいという心理が働いていたとしても、おかしくないというわけだ。
コンサル業界は、空前のバブルを背景に人材獲得競争を繰り広げてきた。だが、足元では管理職人材の獲得競争のフェーズは一段上がったようにも映る。アクセンチュアの大盤振る舞いともいえる「8倍キャンペーン」がいかなる効果を上げるのか。今後の業界勢力図を占う上でも、動向は注視すべきといえるだろう。



