崩れるコインPhoto:nicolamargaret/gettyimages

ビッグ4最大手のデロイト トーマツ コンサルティングで内部崩壊が進んでいる。今夏頃から業績が急激に悪化。社内の不満のマグマは爆発し、“クーデター”も勃発した。経営陣は大胆な路線転換を表明したものの、社内の混乱は収まらず、復活には程遠い。長期連載『コンサル大解剖』内の特集『デロイト内部崩壊』では10回前後にわたり、巨大コンサルの内部崩壊劇の全内幕を明らかにする。初回の本稿では、ダイヤモンド編集部が入手した内部資料などを基に、売り上げや稼働率といった主要な業績数値を公開し、“予算未達ドミノ”とも言うべき窮状を示す。また、デロイトが打ち出した業績目標の下方修正に加え、密かに策定した、人員削減を柱とするリストラ計画の全容も詳報する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

デロイト社長が「業績悪化と経営課題」を総括
組織の肥大化や高報酬、派閥…複合要因で崩壊

 業績悪化ならびに経営課題に関する真因――。10月27日、デロイト トーマツ コンサルティングで開かれた緊急のパートナー会議。佐瀬真人社長がプレゼンテーションで、デロイトが置かれた厳しい現状を総括した。

 ビッグ4最大手のデロイトは、コンサルバブルを背景に急成長を遂げてきた。コンサル事業単体での売上高は開示されていないが、グループの業務収入から監査法人の業務収入を引いた数値で見ると、この4年間の年平均成長率は14.4%に達する。まさに“2桁増”で業績を伸ばしてきたのだ。

 業容拡大に合わせて積極的な採用も続けてきた。昨春、デロイトの採用担当役員はダイヤモンド編集部の取材に、当時4000人規模だった体制を、子会社なども含めたグループ全体で「5年後に1万人」にする大増員構想を披露していた(『デロイトのコンサル採用責任者が初激白、「5年後に1万人」大増員計画と人材引き止め策の全貌』参照)。

 ところが、である。デロイトは今年、採用に急ブレーキをかけた。昨年から大幅に増やしてきた人員は足元で横ばいに転じた(『【独自】デロイトがコンサル採用停止で独り負け!?アクセンチュア&ビッグ4の最新人員数を公開』参照)。採用の抑制は、人材が成長の原動力であるコンサルビジネスにとって異常事態だ。

 デロイトに何が起きているのか。実は、冒頭にトップ自らが認めているように、業績が悪化しているのだ。しかも、採用をいったん抑えざるを得ないほどの苦境にあるということだ。

 欧米では景気後退懸念を背景にコンサルビジネスの先行きに暗雲が漂い、米アクセンチュアなどの大手ファームが相次ぎ人員削減などに踏み切った。バブルを謳歌(おうか)してきた日本のコンサル業界にも、ついにその余波が及んできているのか。

 それは否である。デロイトの業績悪化は外部環境によるものではない。実際、アクセンチュアを筆頭に国内の競合ファームには、変調の兆しはない。

 むしろ、デロイトの不振の元凶は内部に存在する。トップをはじめとする経営層の判断ミスや暴走、大量採用を続けてきた末の人事戦略の失敗、組織のひずみや肥大化、行き過ぎた高額報酬、そして、それらに起因する苛烈な派閥抗争や“独裁体制”による大粛清…。数多の要因が複合的に絡み合った挙げ句、内部崩壊を起こしているのだ。

 本来、企業をコンサルティングする立場であるプロ集団はなぜ“崩壊”の道のりを歩むことになったのか。ダイヤモンド編集部は、入手した社外秘の資料や関係者への取材を基に、デロイトが抱える“病巣”を浮き彫りにし、内部崩壊劇の全内幕を明らかにしていく。

 まず初回は、デロイトの部門別の売上高やコスト、稼働率といった直近の主な業績数値を公開する。内部資料からは、主要指標の実績が軒並み予算を下回る“未達ドミノ”とも言うべきデロイトの厳しい窮状が浮かび上がる。

 さらに、苦境にあえぐデロイトが打ち出した業績目標の下方修正の中身に加え、コンサルにとって“禁じ手”ともいえる人員削減を盛り込んだリストラ計画の全容を詳報する。人員削減の計画は一般社員にはまだ知らされていない。“追い出し部屋”とも評される組織の存在や、年収が最大で数千万円減るポストについても明らかにする。