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M&Aの活況を背景に日本のPE(プライベートエクイティ)ファンド市場では、複数の買い手候補による競争入札の増加や、事業会社や商社などとの競争激化で、投資参加の難易度が上がっている。PEファンドは、案件獲得(オリジネーション)と、投資後の価値向上(バリューアップ)の両面での体制強化が重要なテーマとなり、採用ニーズにも変化が出ている。投資銀行やFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)などM&A実務経験者を中心に構成されるPEファンドの投資チームは近年、一部のファンドで戦略コンサルタントに加え、特定領域での事業理解やバリューアップ経験を持つコンサルタント(戦略・業務・BDDなど)への関心が高まっている。コンサル出身者のPEファンドへの応募も増加し、2025年にXG Partners経由でPEファンドへ書類応募したコンサルタントは前年比で約1.2倍となった。PEファンド転職は容易ではないが、まずはどのような人材が求められているのかを正確に捉えることが重要だ。長期連載『コンサル大解剖』内の連載『コンサルキャリアの新潮流』の本稿では、PEファンドへの転職市場の動向や採用ニーズの変化、26年以降の展望、そしてコンサル人材がPE転職を成功させるためのポイントについて整理する。(XG Partners エグゼクティブサーチコンサルタント 高木ゆり恵)
PEファンドの採用ニーズが拡大
コンサル出身者への関心も高まり
2025年のPE(プライベートエクイティ)転職市場を一言で表すと、「転職者の関心の高まりに加え、PEファンド側の採用ニーズも拡大した一年」でした。PEファンドの採用人数はファンドレイズ(資金調達)や投資サイクルに左右されるため、毎年一様に増えるものではありません。
ただ、25年は日本のM&A市場が過去最高水準まで拡大し、PEファンドの投資動向も堅調に推移しました。加えて、一部グローバルファンドの再進出や新規参入、日系ファンドの新設も相次ぎ、現場感としては採用機会が広がった一年と捉えています。
PEファンドの採用ニーズを俯瞰すると、依然としてM&A実務経験を持つ人材が中心である点は変わっていません。XG Partnersの求人データでも、コンサルティングファーム出身者を採用ターゲットとする案件は全体の約3分の1にとどまり、投資銀行やFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)などの経験者を前提とした募集が主流です。
一方で、採用担当者との対話の中では、戦略コンサル出身者への関心が高まっていると感じる場面も増えています。背景には、投資後の価値創造において事業理解やオペレーション改善の重要性が高まっていることがあります。特に、投資前のオリジネーション段階(案件発掘・組成)から、営業改革、コスト構造改善、DX(デジタルトランスフォーメーション)、PMI(ポストマージャーインテグレーション)といった論点を具体的に描ける人材への評価が高まり、コンサルタントのスキルが投資判断と接続するケースが増えています。
実際に、事業理解やバリューアッププランの解像度が高いコンサルタントが、オリジネーション段階から買収対象企業のオーナー経営者に対して投資提案を行うことで、売り手側においても「PEファンドと組むことで事業改善や成長が期待できる」という納得感を醸成しやすくなったという事例も見られます。
当然ながら、売り手のオーナーは自社事業の専門家であり、買い手に対しては「自社の事業をどこまで深く理解しているか」、その上で「さらなる成長を実現できるパートナーたり得るか」という観点から極めてシビアに評価しています。
従って、こうした場面においては、事業構造の理解や成長余地の仮説構築を高い解像度で示せるコンサルタントの強みが、投資機会の獲得そのものに直結する局面も増えています。
26年以降は、前述の通り25年に見られた「投資後の価値創造を見据えた採用ニーズの変化」が一定程度継続すると考えられます。すなわち、従来のM&A実務人材を中心とした採用構造を前提としつつも、投資前後を一体で捉えた価値創造を担える人材へのニーズが、各ファンドで徐々に顕在化していくと見込まれます。
その背景には三つの構造的要因があります。
PEファンドによるコンサル人材への高い採用ニーズは26年以降も続きそうです。次ページでは、コンサル人材が求められる三つの構造的な要因を解説していきます。また、コンサル人材がPEファンド転職で直面しやすい壁とその乗り越え方に加え、採用選考の対策の方向性についても説明します。







