東鉄工業は東日本エリアを中心に線路・土木・建築などの事業を展開する鉄道系ゼネコン。専門性の高い技術と20年先が見通せる安定性のある市場、鉄道以外の業界からも期待されるメンテナンス力を生かした発展性のある事業により、業界をリードし続ける企業だ。
前川忠生 代表取締役社長
東鉄工業は、鉄道関連設備の建設と保守に関する高度な専門技術を持つ鉄道系ゼネコンのリーディングカンパニーだ。近年、頻発・激甚化している自然災害においても、鉄道インフラが被ったダメージを先頭に立って復旧対応に当たっている。「~安全はすべてに優先する~」を経営理念に掲げ、安全で快適な交通ネットワークと社会基盤の創造に貢献。鉄道設備の保守に関わる業界団体「全国軌道業協会」の会長を、同社の歴代社長が務めている。
鉄道事業の根幹を
支えるプロ集団
1943年、当時の鉄道省の要請により、鉄道の保持・強化を目的に東京鐵(てつ)道工業として設立された同社の事業部門は、現在、「線路」「土木」「建築」「環境」の4部門。どの部門においても独自性を発揮してシナジーを高めることで、鉄道工事業界において「ナンバーワン」、建設業界においては「オンリーワン」の企業を目指している。
線路事業では、国内最大規模の線路メンテナンス工事のシェアを誇る。線路メンテナンス工事とは線路の修繕、レールや枕木の交換といった、列車を安全に走行させるために定期的に行わなければならない重要な工事のことだ。
土木事業では、高架橋、トンネル、立体交差といった鉄道土木工事、乗客の安全を守るホームドア工事、近年、特に重要性を増す防災・耐震補強工事などを手掛けている。東北新幹線が被災した福島県沖地震の災害復旧工事のような大規模な難工事では、真っ先に同社に声が掛かるという。
建築事業では、駅舎の新築など駅関連施設はもちろん、線路近接という難度の高い建物の建築から、マンション、ホテル、商業施設、工場・倉庫まで、受注の範囲は幅広い。
環境事業では、環境負荷の低減に向けた壁面・屋上緑化を中心に、太陽光発電・ZEB(ゼブ)(エネルギー消費ゼロを目指す建物)化なども手掛けている。
②土木事業:2019年に発生した台風19号により流失した橋りょうを約1年半という短期間で復旧(東日本旅客鉄道 第6久慈川橋りょう復旧工事)
③建築事業:山手線に近接した狭隘(きょうあい)な箇所での難度の高い工事(ホテルメッツ秋葉原新築工事)
④環境事業:暑熱対策事業を実施(新横浜駅前公園暑熱緩和対策施設「木陰のトンネル」)
盤石な財務体質と
抜群の安定性
前川忠生社長は、同社の特徴を三つ挙げる。それは「専門性」「安定性」「発展性」だ。
まず、専門性。鉄道工事では複雑な構造物や厳格な安全ルールがあり、特殊なノウハウを要するため、対応できる企業が限られ、他社が参入しにくい分野といえる。前川社長はこう説明する。「国内の建設業者数は約48万社(2024年3月末時点、国土交通省調べ)あります。その中で鉄道関係の工事を専門にしている元請け会社はわずか数十社。特殊技術・技能を持つ会社が限られていることは、この数字からも分かります」。
そのため、過当な競争に巻き込まれることがなく、高度な技術力で高付加価値を生み出す同社が、ゼネコン業界の中で高い利益率を維持し、資本効率や財務健全性で高水準を継続しているのも納得できる。